2022年5月19日木曜日

岩波新書826「ドイツ史10講」(2003)

岩波新書826「ドイツ史10講」坂井榮八郎著(2003)を読む。これが岩波新書新赤版の「史10講」シリーズの最初の一冊。著者はドイツ近代史の専門家で東大、聖心女子大教授らしい。イギリス史、フランス史と読んで、今回ドイツ史に到達。みんな相互に連動してるので一緒に読まないといけない。

第1章ではタキトゥスによって伝えられたアウグストゥス帝時代の紀元9年「トイトブルクの森の戦い」エピソードから始まる。ゲルマンの族長アルミニウス(ドイツ名ヘルマン)がローマ・ウァールス軍を撃退した古戦場はどこか?

日本の邪馬台国論争のようにドイツではこいつが長年の論争だった。かつてテオドール・モムゼン(1817-1903)も推定した場所でもあるニーダーザクセン州オスナブリュック市の北約20キロで、1987年にローマコインが発見され、本格的な考古学調査が始まった。
結果、壮年男性の遺骨なども多数発見。トイトブルクの森古戦場に同定された。自分はこのエピソードを知らなかった。

そしてメロヴィング朝フランク王国カールの戴冠。この時代、フランク帝国とはいっても統治機構が整備されていたわけでなく、当時の人々には国家とはエクレシア(教会)と同義だったということも学んだ。

そして第2章から神聖ローマ帝国なのだが、これは高校時代から苦手分野。あまりイメージができないしよく覚えていない時代。
ザクセン朝、ザーリアー朝、シュタウフェン朝、そして大空位時代。まったく忘れてた。
諸侯たちによる地域主権国家の神聖ローマ帝国では王位と帝位は安定しない。

そしてルクセンブルク家からカール4世(ボヘミア王)。自分、昔バックパッカー旅行でプラハも行ったのに、このへんの歴史を何も知らないままだった。
え、ハプスブルク家が繁栄し皇位を独占していったのは政略結婚と相続?!

今回この本を読んだことで、ナポレオン戦争後のドイツとプロイセン、ビスマルクとドイツ帝国についてさらによく理解が進んだ。

明治時代の日本人はドイツに留学してたのだが、それはアメリカ人も同じでやはり留学先はドイツだった。19世紀末のドイツはそれぐらい先進国だった。
大学卒→国家資格→就職という社会を最初につくったのがドイツ帝国?!

ヴィルヘルム2世の時代になって英国と関係が悪化し、英仏協商、英露協商によって、気づいたらドイツは孤立。仲間はオーストリア。
だがオーストリアは1908年にボスニア・ヘルツェゴビナを併合しセルビアとの関係を悪化させていく。そして第一次大戦へ。ああ、ここからドイツの転落。欧州を焦土にして敗戦。
どうしたって払えない賠償金。ルールをフランスに取られてハイパーインフレ。国民は早々にワイマール共和国を見放していた。
そしてあの男が出現してから失業率も改善。全権委任法で立法と行政、そして司法のすべてを手にする。

なぜドイツでナチスが生まれた?「テクノクラートこそが大衆人の典型」(オルテガ)

第二次大戦後の西ドイツの復興は意外に早かった。工業資産が残ってたしマーシャルプランを受けられたし。だが、東ドイツは大きなハンデを負う。悪魔のようなソ連に占領されたからw
ガス水道施設や線路(枕木ごと)持っていかれたw 重要企業も接収されソ連向けに生産。

著者が留学していた1960年代の西ドイツでは東ドイツの国名を口にする事すらタブー?!「いわゆるDDR」という表現のみが許容?!

西ドイツのコール首相が民主的手続きをすっとばして東西ドイツ統一を急いだのは、1848年のフランクフルト国民議会が統一憲法をゆっくり審議してるうちに国際情勢が変わってしまった苦い経験を活かした英断?!

コール首相の前のシュミット首相と言う人をまったく覚えていない。
調べてみたら、戦後の西ドイツ時代から現在まで、ドイツの歴代首相は現在のオーラフ・ショルツで9人目。CDUとSPDで二大政党制みたいになってる。
一方日本の戦後の首相は35人…。

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