2021年12月31日金曜日

村上春樹 「古くて素敵なクラシック・レコードたち」(2021)

村上春樹「古くて素敵なクラシック・レコードたち」(2021 文藝春秋)という本を手にとってしまった。自分、村上春樹をほんの数冊しか読んでない。エッセイとか読んだことない。

村上春樹の本を読めばこの作家がクラシック、ジャズ、ロックについて造詣が深いことは容易にわかる。この本では著者が60年代中頃から集めて貯まった膨大なライブラリー(気づいたら同じ曲のレコードが数枚ずつ溜まってしまっていたという)から486枚を選び出し、写真付きで簡単な解説を書いたもの。
そのほとんどが中古で安価で購入したもの。お気に入りの演奏家だから買ったというものもあれば、ジャケ買いしたものもある。数枚セットで1ドルとかで買ったものもある。

今では音楽はネットで聴くものとなってしまったが、昔はレコードのカタログを入念に見て、名盤ガイド的な本に目を通して、やっとデパートの陳列ケースにあるレコードを買うというものだった。とくにクラシックレコードは毎回真剣勝負のような目利きが必要。村上春樹も買って売っての繰り返し。それでも自宅に1万5千枚くらいレコードがたまる。

この本は名盤ガイドでなく、村上春樹所蔵のLPレコードを取り出して「こんなのあるよ」と紹介するだけ。褒めているものもあれば「面白くない」と貶してしるものもある。この本が何の役にたつのか?作者本人も「何の役にもたたないかもしれない」と言っている。レコード評としては読んでいてそれほど面白いものでもない。

ちなみに村上春樹はカラヤンやフルトヴェングラーといった王道はほとんど買ってない。そしてワーグナーとブルックナーにはまったくと言っていいほど興味を示さない。そのへんは自分と似ている。

50年代後半に一般化したステレオ録音という技術によって、各レーベルはお抱え演奏家に短期間の間にモノラル録音からステレオ録音への切り替えを要求した。なので今日ではほとんど忘れられた50年代モノラル録音LPも多数紹介。そのへん、自分はまったく無関心だった。アンセルメのドビュッシーをモノラル盤で聴こうとは思わなかった。ヨッフムのカルミナ・ブラーナにモノラル盤があったことも知らなかった。

どうやら村上春樹お気に入りの指揮者はトマス・ビーチャムイーゴリ・マルケヴィッチだったようだ。自分はビーチャムはほとんど関心持って聴いてこなかったがマルケヴィッチは関心高い。もうちょっと聴いてみたい。

自分も学生時代からクラシックを聴くまくったので、知らない演奏家とかないだろうな…ぐらいに考えてページをめくっていったのだが、LPレコードでしか聴けない忘れ去られた演奏家も村上春樹はピックアップ。ユージン・フォドア(vn)とかまったく名前も知らなかった。

若くして亡くなったジョン・オグドン(p)はCD時代を生きた自分にもそこそこ有名だと思う。あんまり聴いてないけど。
あと、グリーグ「ヴァイオリン・ソナタ第3番ハ短調」は自分はほとんど聴いたことがない。シューベルト「弦楽五重奏曲ハ長調」も聴こうと思ったことすらない。

ちなみに自分はクラシックLPを20枚ぐらい持っている。すべて2000年前後に中古で50円~1000円ぐらいで買ったもの。ネットで聴けたりするのでこの10年まったくターンテーブルで聴いてない。ターンテーブル自体たぶんもう死んでる。
そして今後数年以内に大量のLPレコードが誰かの遺品として中古で出回る…。

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