太宰治の未完の短編小説「グッド・バイ」をケラリーノ・サンドロヴィッチが補筆したものをベースに奥寺佐渡子脚本、成島出監督で映画化した「グッドバイ〜嘘からはじまる人生喜劇〜」(2020 キノ・フィルムズ)を見る。
夏帆主演ドラマにも同じ題材のものがあるのだが、あれは現代アレンジ改変。こちらは太宰原作に忠実な終戦直後の昭和20年代。
女にだらしのない田島を大泉洋、元担ぎ屋でガサツで大食いで生命力のたくましいキヌ子を小池栄子が演じてる。このふたりは来年のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の十三人」で日本史上最も有名な夫婦を演じる。注目が集まってる。
冒頭から小池栄子が原作イメージぴったりで笑う。「まるでなっちゃないじゃないの」
大泉田島も闇物資であぶく銭を十分稼いだのでそろそろ本業に専念して疎開先から妻子を呼び戻そう…という設定も原作に忠実。
昭和20年代当時の資料写真を忠実に再現した感じはある。でもやっぱりそれらしくない。大泉も小池も肌がのっぺりキレイ。水上勉の「飢餓海峡」と別世界。小池のしゃべり声がキャラつくりすぎてて可笑しすぎ。
バラック小屋のトイレは高得点だが、復興マーケットで売ってるものがキレイな製品だったり、劇場のモギリ嬢が客ひとりずつに「ありがとうございました」と声をかけるシーンとか、昔の映像で見たことない。
ボロ衣服にスレとアカヨゴレと土埃感と煤汚れ感もほしい。昭和20年代の化粧の感じもほしい。
キヌ子を美人に仕立て上げ、ふたりで最初に出向く花屋女は緒川たまき。イメージしてたキャラより年齢が上に見える。終戦直後の人はみんな老けてた…という点で納得することにする。
2人目挿絵画家は橋本愛。モダンガール。シベリア帰りの兄が皆川猿時。こいつが出てくると「あまちゃん」感がする。この2人目でかなりコント感が強まる。
3人目美人女医が水川あさみ。こいつは頭がいいので二人の関係を見抜く。
ここまで見てきて展開がよく意味がわからなくなってきた。どうやらやっぱりコメディー舞台作品っぽい。困惑。
橋本愛の口から「変態性欲者です!」という台詞が出るのが可笑しい。
青森の実家にいたはずの妻(木村多江)と作家松重豊ができてたというさらにコメディー展開。
占い師戸田恵子とのシーンでカメラが異常に縦に揺れている。なんで?
田島は強盗に殺されてしまうのだが、実は死んでなくて人身売買で鉱山?なんだこりゃ。
ケラさんによる自由すぎる改変。終盤ちょこっと出てくる池谷のぶえのキャラには笑った。
どう見たらいいのかわからず混乱した。下北沢で舞台を見てるような感じだった。映画らしくない。正直、期待したほどには面白くはなかった。
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