2021年6月17日木曜日

YUI「タイヨウのうた」(2006)

映画「タイヨウのうた」(2006 松竹)を見る。今日6月17日はこの映画の公開からまる15周年なのでひさしぶりに見る。たぶん7年ぶりか8年ぶりぐらいで見る。DVDも持っているのだがあえて配信でみる。
原作脚本は坂東賢治。監督は当時25歳で長編初監督の小泉徳宏。制作はROBOT。

この映画を見たことがその後10年以上に渡ってYUIを追いかけるきっかけとなってしまった映画。ある意味、人生でもっとも自分に直接的に影響を与えてしまった映画。最初から最後まで通しで見た回数は少ないのだが、ほぼセリフもカットも展開も頭に入ってる。
ありとあらゆるインタビュー記事を読み、ロケ地も巡った。YUI for 雨音薫「Good-bye days」も買った。サントラも買った。フォトブックも買った。パンフも買った。

これを見る前は「ああ、また難病純愛映画か…」程度の期待だった。だが、この映画の冒頭でYUIが「It's happy line」を歌い始めた瞬間に脳天に稲妻が走るような衝撃を受けた。映画を見終わった後、ひたすらYUIの動画を漁って見まくった。
この映画のDVDが出た当時、新曲は「I remember you」だったはず。だが、自分が見たときはすでに「Rolling star」が流れ始めていた。度肝を抜かれた。すぐに2nd ツアー抽選に申し込んだ。チケットの当選した仙台と渋谷追加公演に行けた。すでにYUIはカリスマだった。

この物語のヒロイン雨音薫(あまね かおる YUI)はXP(色素性乾皮症)という難病に冒されている16歳。太陽の光に当たれないために行動を制限されている。高校にも行っていない。夜昼逆転の生活を送り、たまに深夜の鎌倉駅でギターを弾き語り。家の窓から見下ろせるバス停にやってくる男子高校生の存在が気になってる。

そんな少女と出会ってしまう高校生が藤代孝治(塚本高史)。バカ男子だが優しい少年。ボーイミーツガール。ガールミーツボーイの夏休み。この設定がもうノスタルジア。

夜明けの七里ガ浜の風景から始まる。良質な日本映画を期待させる。ストリングスによる音楽が物悲しい。この音楽を聴くだけですでに涙腺がゆるむ。
鎌倉と七里ガ浜を選択したのは大正解。あのあたりは何度行ってもこの映画を思い出す。
YUIは演技素人だったのにいきなりヒロイン抜擢。撮影時18歳。冒頭から悲しそうな寂しそうな眠そうな表情をしている。若さを持て余した満たされない表情が絶妙。悲劇を予感させる。
YUIはこの映画で日本アカデミー賞新人賞を受賞したのだが、以後まったく演技の仕事に関心を示さなかった。(ドラマ最終回にカメオ出演のようなことは1回ある)

映画開始10分でのヒロインの生活が画のみで示される。陽が沈んで窓を開けて伸びをする。風が吹いて髪がふわっとする。そこの演出も最適。

父母と最低限の会話があって深夜の鎌倉。ギターケースを開け、マッチを擦りキャンドルをともす。簡単にチューニングをして歌い出す。もう何度も何度も見たシーンだが、なんといってもYUIの唄声を初めて聴いたのはこのとき。だからこその感動。
パトロール中の警官二人の会話は説明っぽくて不要。家に戻った薫がバス停移動させてしたり顔笑顔も自分としては不要。むしろ無表情のほうが面白い。
薫の親友美咲ちゃん(通山愛里)が家にやってくる。このコンビのやりとりがとても楽しい。父(岸谷五朗)とのやりとりも楽しい。
雨音父母がやってるイタリア料理店ロケ地は一度も行けないまま惜しまれつつ閉店。閉店直前は常連客の他にYUIファンが連日押しかけたという。

ただ一人のオーディエンス美咲ちゃんの前で歌ってると藤代孝治が通りかかる。薫は目で追いかけて、なぜかちょっとの時間タメをつくる。猪突猛進ガール薫は藤代を追いかけ踏切で背後からタックルして倒して一方的にまくしたてる。この映画、屈指の名シーンw 
踏切に立つ藤代の背後からひたひたと迫ってくるシーンが可笑しい。今見るとYUIがかなり子どもっぽい。

美咲ちゃんは薫のために高校内の藤代を盗撮。その映像を見るYUIの演技がとても自然でリアル。その背後で「あっちいなー」と扇風機を引き寄せる美咲も可笑しい。美咲はほぼ高校不登校。
ちなみに藤代がいつも一緒にいる友人大西を演じたのが小柳友。なんと元ワンオクのドラマー。それを初めて知ったとき震撼したw
美咲撮影藤代ビデオを見ながら追体験するように夜の街を歩く薫のシーンが悲劇を物語る。悲しみを感じる。
いつものバス停ベンチでなんとなく思いついたメロディーをギター弾いて口ずさんでふっと顔を上げると、そこに藤代。「あ…!」このシーンの妙な間合いと緊迫感がとてもよい。「そっちは?サーフィン?」でギリアウトな訛りをしてしまうYUIも面白い。

ダイナマイト山崎の件。鎌倉駅前とはいえ深夜あんな音量は大迷惑。
そのあと藤代のバイク(スクーター)で横浜山下公園界隈。ああ、青春だわ。ここで流れる曲が「Skyline」。
横浜駅西口での周囲のストリートミュージシャンを巻き込んでの演奏シーンがMVのように理想的すぎる。集まる聴衆も選抜されたかのような若者たち。
弾き語りでの「Good-bye days」が始まるのだが、みんな真剣に聴きすぎ。これは実際のYUIライブでも見られた現象。
ここで最初の暗転。「一緒に日の出を見よう!」「あと10分ぐらいだから!」何も知らない藤代。悲壮感と焦燥感ただよわして薫はその場から逃走。少年は何が何だかわからない。少年と少女の最初のすれ違い。住む世界の異なる両者の絶望。このシーンが今見るととても悲しい。

父親「なんなんだ今朝の野郎は」に対して薫の「やっぱ私が人を好きになろうなんて無理なんだよね。安心して。もう会わないから。」のふてくされた感じがすごく面白い。悲しいシーンなんだけど。

わけもわからず放り出された藤代がXPとは何か?を知るために読んでる本が専門的すぎる。
ドア越しの会話シーンでのYUIの演技が塚本に対して見劣りするのは致し方ない。
美咲と岸谷パパの「わりと詳しくしってます」やりとりがコントっぽい。
だが、父「その彼氏に薫に会ってやってくれって頼んだら、薫は怒るか?」と相談するシーン、なぜかここで自分は泣きそうになる。
薫がご飯に降りてきたら藤代がいる。「何をたくらんでるの?」のシーンが可笑しくて初めて見た時から好き。

左手がコードを押さえられなくなるシーンはやっぱり悲しい。このシーンは正視に耐えなかった。美咲ちゃんの側でもこれはつらい。できていたことがある日できなくなるって老化でも起こることだけど。
階段で「私、歌うから!」の後で藤代がオイオイと泣き始めるシーンもつらくて見てらんない。

全員で東京のスタジオに車でやってきて、いざレコーディングという段になって父も藤代もスタジオから追い出されるシーンが楽しい。
病状が悪化して完全防護服に車椅子という状態で一色海岸。「生きて生きて生きまくるんだから」のシーンの直後のシーンには絶句。突然ネットニュースで誰かの訃報を見たような感覚。
子どもを亡くした親の悲しみ。愛する人を亡くす悲しみ。薫の音楽を聴きながら小町通りを歩く美咲の悲しみ。薫の死後は誰も泣いてない。だからこそ伝わってくる喪失の悲しみ。

久し振りに見返したらYUIがやたらと初々しい。18歳なんだからあたりまえだが。

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