「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」(2018 ビターズエンド)という映画があるので見る。「ドラゴン桜」で有名になった南沙良が主演なので注目度が高まってる。
蒔田彩珠、萩原利久といった映画やドラマで見かけるようになり始めた若手たちの青春映画。監督は湯浅弘章。脚本は足立紳。制作は東北新社。
タイトルが示す通り南沙良が喋れない女子高生を演じてる。正確には人前で言葉を発しにくくなるなんだかの疾病らしい。高校ロケ地がまたしても沼津の静浦中学だ。
で、高校に入学して最初のクラスにみんな集合。お調子者バカ男子(萩原利久)が「趣味はセッ〇スで~す」などとふざけてスベって教室を壮絶に寒くした後に、少女に順番に自己紹介が回ってくる。
この女の子が明らかに負のオーラを身にまとってる。そして喋れないという事故。これは英国王ジョージ6世よりひどい吃音だ。
そういう子を初めて見た15歳たちがつい笑ってしまうのは致し方ない。だが、大学で教育学を学び教員免許を持った先生が、明らかに事故を起こしそうな車両を長く走らせすぎ。何の配慮もない。「もういい」と切り上げるのみ。教師として子どもたちに何か言うべきことはないのか?教員同士で「そういう生徒がいる」と申し送りもないのか?
居場所がない。校舎の裏でひとりメシしながら独りで会話。人がいない場所では普通に喋るので通常の吃音ではないらしい。
誰もケータイもスマホも持っていないので90年代が舞台かもしれない。
担任の先生とふたりきりでも強度の吃音。最初の第一声から発声が脱輪事故。母音から始まる言葉が特にダメ。
同じく教室で孤高の女子(蒔田彩珠)が階段で歌ってる。吃音少女は勇気を出して話しかける。「喋れないなら書けば?」
この子だけは喋れないヒロインをそのまま受け入れる。入学以来初めての友だちの予感。
この子がボサボサショートヘアロック少女。部屋にはROCKIN'ONやCD、そしてギター。「すすすす、すごい!」
だが、超絶音程感がない。つい笑ったら激怒「帰れ!」この子も気難しい。
憐れ…ひとり帰り道、むせび泣く。吃音少女、つねにうつむきがち。
「笑ってごめん。私は最低。」「アンタはいいよね。言い訳できて」
なぜに女子高生が個室カラオケで「翼をください」を選曲?吃音少女は上手に歌う。「私と組まない?」志乃ちゃん(南)が歌い、加代ちゃん(蒔田)がギターを弾く。ユニット名は「しのかよ」。
夏休み、文化祭のために練習開始。知ってるやつのいない場所まで行く。橋の上で歌う。ギターも歌唱もスキルが素朴すぎる。これでよく人前で演奏しようと思える。ロック少女は思考も行動もロック。
まるで感動的なミュージックビデオ。いつの間に少人数ギャラリーも。伊豆の津々浦々の風景が美しい。
清掃作業シニア渡辺哲さんが無言で見守ってる。できることなら哲さんが実はすごいロックギタリストでスパルタコーチとか始まったら面白いのに…とか空想したw
度胸付けのために駅前で歌ってたら、そこにお調子者バカ男が自転車でザっと登場。「何してんの?!」
いい感じで歌ってた志乃ちゃんはサッと表情が曇り逃げ出す。このタイミングと演出がとてもよい。「あんなやつ死ねばいいのに」
この空気読めない男が悪気もないのにふたりの関係もぶち壊す。ユニット存続の危機。そして加代は1人で文化祭のステージへ。
このステージが水を打ったように静かすぎ。もっとざわざわしてていい。演奏前にスピーチとかいらない。志乃独白が始まったのは怖かった。
勇気を出して自作詩を下手なギターで人前で歌ってみたら、エモくなった相手からメッセージが返ってきた…という中学生のような話。佳作ではあったが爽快感は少ない。楽しい文化祭だったのに周囲のテンションだだ下がり。
できることなら、ジョニー・サンダースの「Born To Lose」とかブチかまして退屈な田舎高校の文化祭を興奮のるつぼにアゲアゲというラストにしてほしかった。
映画内で洋楽を使ってしまうと後に権利関係で配信や円盤化が難しくなるなら、ブルーハーツとかかましてほしかった。
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