三島由紀夫「午後の曳航」(昭和38年 講談社)を新潮文庫(平成25年78刷)で読む。
文庫裏に書いてあるあらすじではこの小説のイメージがぜんぜんできない。ざっくり言えば、夫を亡くして5年の美しい未亡人黒田房子と、逞しい船乗りの男塚崎竜二(二等航海士)の恋愛。
房子が33歳ぐらい?元町で舶来品のブティックを経営。竜二が34歳。貨物船に乗り込み世界の港を回るのだが仕事に退屈。
房子の息子登(13歳)が抽斗に入って隣の母親の部屋をのぞいてる。母の裸(自慰)を見ている。少年は部屋の外側から鍵をかけられるとそれを察知する。さらに、男に抱かれる母を見ている…というショッキングなシーンから小説は始まる。
この少年が不穏に不気味。「首領」が仕切るグループと一緒に遊ぶ。登はナンバー3。猫を惨殺し解剖したりする。
房子と竜二は出会って2日で家に連れ込んで早くも男女の関係。そして竜二は出航していく。
貨物船は冬に横浜港に帰ってきた。男は長年船員として働いて独身「貯金が200万円」ある。房子にプロポーズ。
房子の店の常連客で映画女優依子に相談すると、探偵を雇って身辺調査すること、船員は病気を持っていることが多いので健康調査をすること、男を怠けさせないように店の経営の仕事を覚えさせること、対等でなめられないようにすること、などアドバイスされる。えぇぇ…。
調査結果も男から聴いていたことと相違ない。これは子どもを連れた30代未亡人にとって理想的な男だ。継母の場合と違って男の子と父親は問題になりにくいそうだし…。
母の連れ込んだ男を羨望していた登だが、自分の理想と美意識に反している点を「罪」として箇条書きしたりする。暑いから公園の水道水を浴びていただけで「ルンペンみたい」と嫌う。え?そんな些細なことで?
男らしく逞しい船乗りが結婚を考え地上でつまらない男に変わっていくのが許せない。そして、のぞき穴の件がバレて母親からヒステリックに激しく叱責。だが、竜二は父親らしく寛大にふるまう。
登ら少年6人は竜二を処刑することにした。
残りのページからたぶん殺害シーンまでは至らないことが予測できた。これは「青の時代」でも見たパターン。
人けのない場所におびき出され睡眠薬入りの紅茶のカップを渡される場面で小説は終わる。少年たちは刑法で罰せられないことを知っていての犯行だけに質が悪い。
こいつの乳房は手にとったときにどんなに汗ばんだ重さで、俺の掌にしなだれかかってくるだろう。
ヒロイン房子は33歳なのでまさみで脳内再生してた。エロスだった。三島の書く文体の美しさとあふれる才能にまたしても圧倒された。
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