遠藤周作「イエスの生涯」(昭和48年)を新潮文庫で読む。遠藤周作は欧米では三島と同じぐらいに有名で、重要な日本人作家と考えられているらしい。
スコセッシ監督の「沈黙」もあって、この「イエスの生涯」も世界の多くの人が「読んだ」ツイートをしてる。
自分、この本を読むまで、イエス・キリストが実在の人物とは思えていなかった。遠藤周作は、メシヤを期待されながら民衆も弟子たちも失望させた弱い人間イエスを、聖書学者たちの学説もとりあげつつ、マルコ、ヨハネ、ルカ、マタイ福音書の伝えるイエスの人間像を合理的解釈によって教えてくれる。小説とはいえないかもしれないが、この本もとても重要な一冊。
自分はイエスの弟子たちを立派な聖人だと思ってた。だが、イエスの言う事を理解できずに戸惑ってばかり。500年異民族に支配されてる惨めな民族を救う英雄を期待したのに、奇蹟を起こすことよりも、娼婦や癩病を患うような、従来のユダヤの教えではありえない「愛」を解く。
しかも処刑のそのとき師をおいて逃げる。「自分はイエスと無関係だ」と証言。そんなにダメな弟子たちだったんだ…。
その弟子たちの中で唯一イスカリオテのユダだけが師の孤独と絶望が見えていた。ユダというと世界史上もっとも有名な裏切り者の代名詞。しかし、この「イエスの生涯」を読むとユダの見方が180度変わる。
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