アガサ・クリスティー「スリーピング・マーダー」(1976)を読む。早川書房クリスティー文庫(2004)の綾川梓訳で読む。私的クリスティマラソン78冊目。
SLEEPING MURDER by Agatha Christie 1976
ニュージーランドから英国へ移り住む新婚の若妻グエンダは、後からやって来る夫ジェイルズ・リードに代わって英国南部で新居を探し歩いている。ディルマスという田舎町にヒルサイド荘という家を見つけて移り住む。
マープルの甥レイモンドのパーティーで余興芝居を観劇中に昔の記憶がフラッシュバックしヒステリーとパニックを起こしたグエンダ。過去の記憶、女の絞殺死体。それは一体誰?
そして、ヒルサイド荘はかつて幼少時代に、軍人だった父ケルヴィン・ハリディ(インドでグエンダを生んだ後に妻病死。幼い娘はニュージーランドの姉の元へ。)と継母ヘレンと3人で短期間一緒に住んだことのあった家であることが判明。
ジェイルズ&グエンダ夫妻は、18年前にハリディ一家と関わりのあった家政婦、女中、医者、弁護士とその事務員、近くのホテルに滞在していた軍人夫妻に話を聴きに行く。18年前の埋もれた事件を掘り返す。ミス・マープルが「よしたほうがいい」と制止するのも聞かずに。
継母はインドで茶を栽培してたウォルター(現ディルマスの弁護士事務所経営者、独身中年)の元へ向かう船の中で別の恋?ウォルターとの婚約を破棄し、さらに帰りの船でまたさらに別の恋?それが父ケルヴィン?
父ケルヴィンを残して恋人と出奔した継母は今どこに?医者の兄も行方を知らない。ひょっとして、殺されてどこかに埋められてる?傷心の父は精神病院で自殺していた?!
マープル老嬢はリード夫妻とは別行動で、関係者たちの懐にしれっとインして世間話しながら事件の真相を探っていく。
18年間忘れられていて明るみに出なかった事件の真相がだんだんと判明していく「回想の殺人」もの。英国の田舎を舞台にした社会派ドラマ。
マープルはリード夫妻を適切にアドバイスして真相に導いてる。だが夫妻はあまりマープルの言うことを好意的に扱ってない。結局、グエンダがひとり真相に気づいて、あわやの危機一髪。
クリスティはマープルの姿を借りて、たったひとりの誰かが話すことの他ソースがないことを信じる危険を説く。間違った情報を信じると、正しい真相から遠ざかる。
これは読んでるときから面白かった。犯人も十分に適切に意外。
調べてみたらポアロ「カーテン」と同じく、1943年という早い段階で準備されていてクリスティ女史の死後に出版。
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