自分、だいぶ昔に文京区を散歩してたらたまたまそこに佐藤春夫旧居跡という場所に出くわしたことがある。手ぶらで散歩してたら、営業サラリーマン風の若い男に会釈された。何だったんだあれは。
筆者あとがきによれば、大正4年に執筆したもの。その2年ほど前に、都会に疲れて妻とふたりで半年間ほど田舎暮らしをした回想。(現在の横浜市港北区のどこかと作家本人は書いてるのだが、実際は青葉区らしい)
今も昔も都会者が田舎暮らしをするとそれなりに大変な目に遭う。暑い最中に荒れ放題の庭をいじる。犬たちに蚤がわく。隣のばああが口うるさい。猫がカエルをくわえてきて妻が驚き叫ぶw 家にやってくる近所の子が汚いw 周囲が噂話をする。犬がご近所トラブル。ヒラヒラと飛んでくる蛾。いろいろめんどくさい微妙に嫌なことの連続。
たぶんこの夫はノイローゼ。26歳にしてすでに痴呆。犬の幻覚を見たり幻聴を聴いたり、皿一枚、薔薇の蕾のことで妻に小言。じつはこいつがいちばんめんどくさい。自己の認識と現実に大きなギャップ。
そのへんの描写が詩的で美しい。自分は中学高校時代は虫とか花とか動物とか自然とか、何も観察してなかった。ただ自宅と学校を往復してた。そんなこどもにこの小説を読ませても何もイメージ映像が頭に浮かばなかったに違いない。
大正初年ごろですでに「となりのトトロ」みたいな田舎暮らし小説が書かれていたことが驚き。むしろこの小説が「となりのトトロ」の原型かもしれないとすら思った。
薔薇を「そうび」とも読むって知らなかった。飼い犬の名前がフラテとレオなのだが理由は不明。
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