「日本人のための尖閣諸島史」斎藤道彦(2013 双葉新書)という本をつい手に取った。自分、韓国ともめてる竹島については昔から関心を持って何冊か関連書籍を読んだことがある。しかし、尖閣諸島についてはあまり知識がない。
2012年、民主党野田政権下での尖閣国有化に対するカウンターとして中国で吹き荒れた反日騒動は、21世紀の今も中国人は義和団事件のときとたいして変わってないな…と思わされた。中国では政治的な主張デモなど一切許されないので、この騒乱は中国共産党企画プロデュースだったことが明らかになってる。
当時、図書館で何か関連本はないかな?と探したら「尖閣列島-釣魚諸島の史的解明」(井上清 1972 現代評論社)という古い本しか見つからなかった。この本はなんと日本人による尖閣諸島は中国領という主張の本だった。(2012年に第三書館から復刻もされている)
この本があまりピンとこない内容の本で、多くの人から批判酷評されている。明清の時代の古文書の専門家でもない著者が、都合のいい箇所をつまみ食いし我田引水し牽強付会の持論を喚き散らすだけの本だった。読んでいて主張と結論に何も論理性を感じさせない酷い本だと感じた。なんと、中国側からの領有権主張の論拠の多くがこの本をベースにしてる?!
で、この「日本人のための尖閣諸島史」という本は、井上清の本に書かれてる主張すべてに反論し批判することが内容のほとんど。舌鋒鋭い在野の論客?あまり学者らしくない文体と物言い。最後の方になるとかなり荒っぽい言葉がならぶ。
中国(台湾も)魚釣諸島の領有権を主張し始めたのは、石油資源の埋蔵が期待されるという調査結果が出た1971年以降から…という「まとめ」をよく目にする。あまり深く掘り下げないニュース記事とかで。それ、本当?って思ってた。テレビや新聞では誰もそこを詳しく解説してくれてない。
日本の尖閣領有の根拠は1895年1月14日の領有の閣議決定。尖閣諸島(魚釣島と久場島の2島)が無主地であることを足かけ10年かけて慎重に確認した末の閣議決定だった。
中国側は「日本が魚釣島を盗んだ」と抗議してるわけだが、この本を読むと驚く。過去、中国が魚釣島を領有していたという証拠がなにもないってマジ?論拠はかなり弱い印象を受ける。
反日デモであれだけイキリ狂ってたので、てっきり何か相当に強い思い入れが漢民族にはあるのかと思ってた。そんなことは何もない。
明の時代に福建と琉球を行き来してた航海のための目印の島でしかなかった。そもそも明の時代には台湾すらも中国の領土ですらない。
連合国から日本に沖縄が返還されるときまで、中国は尖閣をまったく気にしてなかった。1895年の閣議決定で日本が盗んだというなら、その後にいくらでも抗議する機会があった。サンフランシスコ条約でも尖閣はなんら問題になってない。
どんな係争にも両者にとって有利不利な論点があるはずだ。だが、この本はすべてにおいて中国の主張を論破してると豪語してる。すべてにおいて「証拠がない」「根拠がない」「矛盾してる」と中国を喝破。日本人は読んでて気持ちいいに違いない。
できることならこの本へのさらなる中国側からの反論を読みたい。韓国のように論点をずらさないで、ひとつづつ反論してほしい。そして公平な第三者の判定を聴いてみたい。
0 件のコメント:
コメントを投稿