横溝正史「スペードの女王」を読む。1996年春陽文庫版で読む。昨年秋に100円で拾ってきたもの。
スペードの女王 「大衆読物」昭和33年6月号「ハートのクイン」を改題したものと書いてある。
緑ヶ丘荘の金田一事務所を訪れた50年配の女性。70になる夫は刺青彫り師。「神風タクシー」に轢かれて事故死したのだが不審だと訴える。
彫り師の老人は目隠しされ車に乗せられ、どこだかわからない部屋で、顔を隠された女性の内股にトランプの「スペードのクイーン」を彫らされる。無事に家まで送り返されてからの交通事故死。だが生前、夫人に詳しく事情を話していた。
神保町に事務所を構えるゴシップ誌の女記者が登場。片瀬海岸に浮かんだ太ももにスペードのクイーンの刺青がある女性の首なし死体の記事を書いたところ、何者からか脅迫の電話。この女が緑ヶ丘荘に連絡をよこしたり鎌倉に現れたりするのだが消息不明。金田一さん胸騒ぎ。
片瀬海岸で見つかった首なし死体の件で金田一、等々力警部、県警の刑事たちが聞き込み開始。
極楽寺の別荘から姿を消した男はどこへ?やがて政財界の大物岩永(スペードの女王の愛人?)も死体となって発見。さらに車のトランクから死体発見。
いつものように金田一さんは一度ふらっといなくなってから再び刑事たちの前に現れて犯人を罠に嵌める。この犯人の行動がよく意味がわからなかった。なぜ死体を掘り返す?アレを落としてしまうと真っ暗な状態では簡単には見つけられないんじゃないのか?
内股にスペードの女王の刺青がある女が二人。首なし死体のスペードの女王を殺して姿を消したのは八百子か?豊子か?に絞られたかと見せかけた古典的なミステリーと思いきや、意外な真犯人を用意する野心的な構図。
だが正直、犯人は途中でなんとなくコイツだと感じた。余韻を味わう暇もなくサッと幕が降ろされる。金田一さんが出てこなければ松本清張のような作風。
金田一さんが法医学の根岸博士と対面したさいに「いちど先生のご謦咳に接したいと思っていたところでした。」と世辞を言うシーンがある。金田一さんの語彙力!に多くの読者が驚いてる。
花園の悪魔(オール読物 昭和29年2月号)も収録。こちらも金田一耕助短編。角川文庫版ではこれがタイトルになった短篇集もある。(「花園の悪魔」もしくは「首」というタイトルの2種類ある。)
東京西郊へ電車で50分の場所にあるS温泉は「アベック」が逢瀬を愉しむような隠れ宿。4月の早朝、温泉宿に併設する花壇で女の絞殺全裸死体が発見される。ヒイィッ!
被害者は温泉宿で顔と名前を知られているヌード写真モデル。死後に凌辱された形跡もある猟奇事件。
刑事がヌードモデル斡旋事務所へ聞き込みに行くと慶大の学生山崎が容疑者に浮上。絞殺に使われたマフラーに事務所のモデルたちも見覚えがあった。
だが、全国に指名手配しても足取りがつかめない。
ラストになって金田一耕助登場。山崎の両親の依頼で事件を調査。事件は意外な真相へ。
金田一さんは、京王百草園に等々力警部をハイキングに誘う。雑草で覆われた横穴に白骨化した死体を発見。金田一さんは等々力警部に事件の真相を語る。そして、金田一さん危機一髪!
これ、意外でなかなか面白かった。終わり方も良い。
「メッカ・ボーイ」という言葉の意味がわからないので調べた。日本も戦後アプレゲールな凶悪事件が多発した。1953年に「バー・メッカ」のボーイが起こした事件が世間で大きな話題になっていた。昭和20年代の言葉はもう意味のわからないものが多い。
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