朝倉あきが主演した「四月の永い夢」という映画があるので見る。朝倉あき主演映画はほぼこれしかない。
2017年モスクワ国際映画祭コンペティション部門で批評家連盟賞を受賞したとあるが、自分はなにも予備知識がない。どんなジャンルの映画なのかわからないまま見始める。
満開の桜と菜の花の風景にたたずむ喪服の朝倉あき、そして朗読。どうやら亡くなった恋人の思い出話映画か?
安そうなアパートに住んでるなと思いながら見てたら、安そうなうどんそば食堂の給仕が仕事らしい。
そこにやってくる作業員風の男が三浦貴大。どうやら手ぬぐい職人らしい。手ぬぐいの展示会を駅前の市民ギャラリーでやってる。見に来て!とチラシを渡す。国立市が舞台の映画っぽい。
このヒロインが教員免許がありながら長くは続かないような食堂給仕のような仕事をしている。この店もあと一か月で閉めるという。
銭湯入浴シーン、畳に布団で寝てるヒロイン、浴衣姿ヒロイン、庶民を描いたリアル現代日本日常映画か?こういう映画なら海外映画賞の目に留まりそうだ。日本のエキゾチックな庶民の暮らしに感心があるような一部のモスクワの聴衆にならうけそうだ。
扇風機、柱時計、ラジカセ、出てくるものがなにもかも古いので一時代も二時代も前を描いた映画か?と思ったらスマホ。
名画座で古い映画を見ていると中学教師時代の教え子に話しかけられる。この女が自称ジャズシンガー。彼氏に殴られたせいでサングラスをしている。
行き場がないらしいので親しくもないのにひと晩の約束でアパートに泊める。この女がヒロインの目を盗んで引き出しを開けて手紙なんかをチェック。彼氏情報をさぐる。
DV被害に遭っていて助けを求めるとか、親しくもないのに朝倉に迷惑をかける。この女優は川崎ゆり子という人らしいのだが朝倉よりも年上だ。
商工会の集いてきな納涼屋上パーティー的なもので三浦と再会。いろいろ話が弾む。この男がわりとマジメでちゃんとしてる。
しかし、暗い夜の街を若い女が一人で両耳イヤホンで歩いて帰るシーンは無防備すぎて、海外の視聴者だけでなく日本の視聴者も不安を感じたはずだ。意味なくカメラが背後から追いかける画になってて不気味。
このヒロインは友人から産休の代理で中学教師の誘いも受けているというのになぜか消極的で思いつめたような顔をしてる。その理由が視聴者には示されない。どんだけ酷いことがあったんだ。
ヒロインは富山の田舎駅に降り立つ。すると関根恵子が迎えに来る。仏壇に手を合わせる。この家はかつての恋人の実家?
4月に亡くなった志賀廣太郎さんが出てる。この日は日本家屋の居間にいるお父さん役がぴったりの俳優だった。
ヒロインは恋人の母にだけ重大な告白をする。死ぬ4か月前に別れてたんです。
人生とはある年代までは獲得していくものだが、ほとんどは失っていくもの。と母は語る。
ここでやっと恋人の遺書のようなものが視聴者に示される。無人の部屋で手紙が燃えてるシーンが心理的圧迫感がする。
この映画の時系列がしっかり見てしっかり考えないとわかりづらい。ここで初めて桜並木と菜の花が富山の風景だったこともわかる。周囲の景色は春から夏になっている。
タイトルに反して日本の夏の風景がつづく。「四月の永い夢」とは、桜の季節に恋人を亡くし次の恋に踏み出せないヒロインと、中学教師でありながらバイトやってラジオ聴いて古い映画見て読書してるぼんやりモラトリアムヒロインを言い表したものらしい。
帰りの電車が30分ほど遅延してふらっと入った食堂。これもモラトリアム。ぼんやりラジオを聴いてると視聴者からのメールと楽曲リクエストを聴いて、ヒロインはふっと笑ってこの映画は終わる。
このラストはいかにもマンガやドラマにありがち。だが、これがないと何もない映画。はたしてこのヒロインの永いモラトリアム白昼夢は終わったのか?
田舎ローカル小規模映画に期待するもの以上は出てこない。でも嫌いじゃない。朝倉あきが頑張ったのだから。
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