2020年3月14日土曜日

A.デュマ「モンテ・クリスト伯」(1846)

アレクサンドル・デュマ「モンテ・クリスト伯」を読んでみた。小学生の時から存在は知っていたのだが一度も手に取ったことがない。
Le Conte De Monte-Cristo by Alexandre Dumas 1844-46
今更長大な物語をフルサイズで読む気が起こらない。なので、小学校高学年以上向け図書を探していた。

岩波版だと上中下の3巻に分かれているのだが、この大友徳明訳偕成社文庫版(2010)は上下巻の2冊のみ。きっとコンパクトにまとまっているはずだと期待した。
現代人には冗長と思われる第2部第3部第4部を大幅にカットして2冊にまとめたものらしい。

若く有能な一等航海士エドモン・ダンテスは妬みと嫉妬と保身から讒言誣告に遭い、身に覚えのない罪(ボナパルト派)を疑われ、何がなんだかわからないまま結婚式当日に逮捕投獄。そして14年。19歳の青年は33歳になっていた。

獄中で同じく無実の罪で投獄されていたファリア神父とこっそりトンネル掘って出会う。ありとあらゆる教養知識を教えてもらったのち老神父死亡。秘密の財宝のありかを教えてもらう。
老神父の死体と入れ替わって死体袋に入って脱出。だが、埋葬されると思っていたら、袋に重しを付けられ海に放り込まれる。だが、なんとか脱出し島に泳ぎ着き生き延びる。

その後、密漁船で働きながら、モンテ・クリスト島の財宝を掘り当てる。この巨万の富を利用しエドモンはパリ社交界のモンテ・クリスト伯爵を名乗って、自分を陥れたやつらへ復讐していく。

時代はナポレオンがエルバ島に流されルイ18世が即位、そしてナポレオンの百日天下を経ての王政復古の時代。こういうのは高校で世界史を習った後でないとよくわからないはずだ。

自分、小学生のとき先生からこの物語を語って聴かされたことがある。当時聴いたものとだいぶ印象が違っていた。おそらく、先生が読んだものは黒岩涙香「巌窟王」だったと思われる。
「モンテ・クリスト伯」はとにかく登場人物が多くて複雑。単純な復讐の物語だと思っていたのだが、復讐する相手の夫人、息子、娘などのサイドストーリーが多くて、読んでいて現在地を見失う。

おそらく、小学生中学生がモンテ・クリスト伯を読んだとしてもほとんど理解できなかったのでは?と思う。公証人とか地理関係とかフランス史とか、たぶんいい大人が読んでもイッパイイッパイになる。

あんまり爽快感のない復讐物語。話が複雑でややこしくてスッキリしない。自分を高く買ってよくしてくれた船会社オーナーの息子と、仇の娘が恋仲になっていたりとか。あとヴィルフォール検事の捨てた息子とか。枝葉末節までギッチリ情報量が多い。上巻の段階で嫌になるw

下巻の終わりごろになって、かつて自分を陥れたやつらが次々と不幸になっていく。ここは面白いかもしれない。
それでもやっぱり回りくどい。そもそも巨万の財宝を得るところからしてあり得ない。湯水のごとく無限の金を使っていく。まるで超能力で無双していく少年漫画のようでもある。これだけダイヤや金塊を市場に放出すると市場価格に影響し相場を下落させるのでは?それに、いち船乗りが貴族と交際できるようになるのも大変だと思う。

今回この本を読んで、アレクサンドル・デュマ・ペール(1802-1870)の父トマ=アレクサンドル将軍はハイチの黒人女奴隷を母にもつ混血(クレオール)だったことを初めて知った。ナポレオン軍には白人黒人混血の将軍もいたのか。

0 件のコメント:

コメントを投稿