昨年夏に初めて「フランケンシュタイン」を読んだ。そのとき作者メアリー・シェリー(1797-1851)の映画があると知った。
やっと「メアリーの総て 」(Mary Shelley)を見た。2017年のトロント国際映画祭でワールドプレミア。監督はサウジアラビア初の女性映画監督ハイファ・アル=マンスール。日本での公開(GAGA)は2018年12月。
16歳少女メアリー(エル・ファニング)は「店番もしないで書き物してる!」と継母からガミガミ叱られる。父は作家で家業は古本屋。父曰く「世の中に必要なのは怪奇小説でなく迷信を打破する本だ」。革命の時代。理性と前進。まだナポレオンもベートーヴェンも存命中。「レ・ミゼラブル」の時代。
父ゴドウィンは娘をスコットランドのバクスター氏のもとへ預ける。そこで21歳の詩人パーシー・シェリー(ダグラス・ブース)と出会う。
メアリーは義理の妹クレアの病気のためにロンドンに戻る。この二人は仲がいい。
すると父がパーシーを連れてやってくる。メアリーとパーシーは恋仲に。
しかし、パーシーの妻と娘が現れる。「夫に近づかないで」メアリー涙目。
継母がパーシーに「奥さん美人ね」と話をふるとこの男がブルブル震えてる。ダメだこりゃw 「5年経つけど関係は破綻してる」と弁明。
女性解放思想家だった母の遺伝子を受け継ぐメアリーは自由恋愛。パーシーに妻子がいても愛が燃え上がる。父は弟子パーシーを追い出す。結果、駆け落ち。なぜかクレアも一緒w
だが、男は家名に泥を塗ったと勘当。極貧生活へ。愛欲と放蕩の日々。
やがて子どもも生まれるのだが、クレアがまるで第二夫人のように居座る。
さらにパーシーが連れて来たホッグという友人がメアリーに迫る。それを深刻な顔でパーシーに相談すると「自由恋愛なんだから付き合えば?」「束縛するな」と言われる。もうなにもかも歯車が狂う。だからこんな男はやめておけと言っただろう!クズ男と関わり合っちゃいけないよ。という映画。
気分転換に出かけたガルバーニ電流ショーでバイロン卿と出会う。メアリーは電流でカエルの脚が動くのを見て呆然となるw「本当に死者を蘇らせることができるの?!」
雨の夜に借金取りから逃げるパーシーとメアリー、そして幼い娘のクララ。熱があるのに雨に濡れたクララは死んでしまう。メアリー呆然。
バイロン卿の子どもを妊娠したというクレアの誘いで3人はジュネーブのバイロン卿の館へ。このバイロン卿が一目見て「変態?」というエキセントリック野郎。メアリードン引きw
この屋敷にポリドリという医者がいる。この人も怪奇小説「吸血鬼」で歴史に名を残す。この人は優しい紳士。
そして、壁にはハインリヒ・フュースリーの「悪夢」の絵画。母の初恋の画家。
雨が降り続く毎日。嵐の夜、バイロン卿は「みんなで怪奇小説を書こう!」と提案。
そしてクレアはバイロン卿から「君は恋人じゃない。遊びだ。」と棄てられる。「男って最低」
バイロン邸のつどいってこんなんだったの?!バイロン卿とメアリーの交流ってこんなイカレた感じだったの?!
19世紀初頭の世界は生きること自体が責め苦。ところで、この映画、なんでPG12なんだ?
ここまででメアリーに「フランケンシュタイン あるいは現代のプロメテウス」を書かせるインスピレーションのすべてがそろった。
薄汚いロンドンに戻ったメアリーは一心不乱に小説を書き上げる。ここまでで1時間36分地点。
メアリーの小説を素晴らしいとしながらも「希望がない」と論評するパーシー。メアリーは冷たく「現実を見て!」と言い放つ。
メアリーは出版社に持ち込むも「若い女性にふさわしくない題材」と拒絶される。
ついに見つけたラッキントン出版社が限定500部で引き受けてくれた。しかし、匿名とパーシーの序文が条件。
ずっとだらしないダメ男だったパーシーはゴドウィン書店での出版パーティーでやっといいところを見せる。第2版からメアリー名義の出版へ。
メアリー18歳を演じたエル・ファニング(ダコタの妹!)が18歳だと知って衝撃。英米の俳優たちはみんな教養を感じさせる演技力がある。暗い映画だが自分には十分に興味深く拝見できた。
PS. 乃木坂46の4期生遠藤さくらはan・an2019年10月2日号で「今夢中の一冊」として「フランケンシュタイン」を挙げていた。どうやらスマホで読んでいたらしい。
「まず物語を作る空想力がすごいです!でも出てくる言葉が難しすぎて…。読んでると時々『わ~っ!?』ってパニックになって、そのまま寝ちゃうことも(笑)。」高校3年生17歳の夏、遠藤さくらさんに「フランケンシュタイン」を読ませたものは何か?ひょっとするとこの映画がそうさせたのかもしれない。18歳の女の子が書いた歴史に名を残した小説ということで関心を持ったのかもしれない。
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