2020年1月2日木曜日

ドロシー・L・セイヤーズ「ピーター卿の事件簿」

ドロシー・L・セイヤーズ(1893-1957)は英国ミステリ愛好家たちにはとても有名。アガサ・クリスティーより3歳年下の女流作家なのだが自分はまだ1冊も読んだことがなかった。
THE CASEBOOK OF LORD PETER by Dorothy L. Sayers
「ピーター卿の事件簿」という文庫本がある。7本の短編を収録した1冊。2017年10月に創元推理文庫から新装版が出て入手が容易になった。だが、これは従来から読まれていた1979年宇野利泰訳版と変わらない。
ピーター・デス・ブルードン・ウィムジイ卿は15代デンヴァー公爵の次男。クリケットの名手にしてワイン通、書物蒐集と音楽、そして犯罪の探求を趣味とする貴公子である。
という働く必要のない貴族探偵。読んでいると印象がエラリーくんとほぼ変わらないw ときどきモノクル(片眼鏡)を目に押し当てる。モノクルって現代日本でも買えるのかな?
では収録作品を順番に読んでいく。

鏡の映像(1933)
ピーター卿がホテルの談話室で出会った本を読む小柄な男は左右の臓器が通常と逆配列になっていた!
気を失って四次元の世界に迷い込んでいる間に、自分に似た人物が窃盗や殺人を犯している!?という話を聴かせる。
ピーター卿は各地へと聴き込みへと出かける。真相はわりと普通っちゃ普通。これはあまりミステリーといいう感じがしない。第一次大戦のベルギーでの塹壕戦の様子が出てくる。舞台設定としては1920年ごろの話か?

ピーター・ウィムジイ卿の奇怪な失踪(1933)
ピレネー山脈のバスク地方を舞台にした事件。迷信深い人々が暮らす村のはずれにアメリカ人医師夫妻が住んでいる。だが、奥さんは悪魔に取り憑かれている?!
旧交を温めに学者先生が訪問するも美しかった奥さんの変わりように恐れをなし逃げ出す。列車の中でピーター卿に出会い出来事を話す。
数日後、その村に魔法使いが住み始め…、という話。

盗まれた胃袋(1928)
ピーター卿の友人(医師)に、丈夫だった胃袋を標本として残し、大伯父が95歳で亡くなった。莫大な資産が銀行口座に残されていない?!遺産はどこへ?!
これは話の予想がつく。だが、それでも面白い。

完全アリバイ(1934)
屋敷で主人が殺されている。タイトルの示すようにアリバイ崩しだが、この時代の英国電話事情に通じていないとわからないトリック。

銅の指を持つ男の悲惨な話(1928)
会員制クラブでアメリカ人の話を聴く。「銅の指」とは何なのか?それがわかったとき一瞬怖い。

幽霊に憑かれた巡査(1938)
いきなりハリエット夫人の出産シーンで驚く。長男誕生の日にピーター卿が遭遇した巡査から聴いた「存在しない13番地の家」の話。このトリックは特に驚かない。英国貴族は見ず知らずの巡査ともすぐに仲良く酒が飲めるのか?

不和の種、小さな村のメロドラマ(1928)
葬式の村。首のない馬と頭のない馭者を見てビビって寝込む小作人などの事件が起こる荘園。そして遺産相続の話。

どれもそれほどミステリーという感じはしない。サスペンス要素もホラー要素も薄い。のどかな雰囲気とユーモア。ピーター卿が上品で性格が良いユーモアのある紳士。たぶんシャーロック・ホームズが好きな人は好き。自分もわりと好き。

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