2020年1月16日木曜日

松井玲奈「カモフラージュ」(2019)

松井玲奈作家デビュー作の短篇集「カモフラージュ」をやっと読んだ。2019年4月に集英社から出たもの。では順に読んでいく。

ハンドメイド(書き下ろし)
オフィスでのOLの会話。映画やドラマでよく見る恋愛ドラマ。24歳のヒロインは彼氏と遭える日は早起きしてお弁当を作る。お昼と晩御飯用。毎日会社で顔を会わせる上司と部下。二人で会うのはホテルの一室。抱き合って会話。ベッドの中で会話。
「人にこの関係の話をすれば浮気相手とか、セフレって言葉が返ってくるんだろう。」
ヒロインはずっとビー玉が落下してきて回転する謎の夢を見ていた。この上司と別れるとその夢を見なくなる。こういうの、自分には書けない。感心しかしなかった。

ジャム(小説すばる 2019年2月号)
一転してこども目線。夜家に帰ってくるお父さんが3人に見えたり、血肉が噴き飛ぶ幻影ホラー作品?

いとうちゃん(書き下ろし)
ストレスのあまり太ってしまったメイドカフェ店員の話。SKE48という人気序列が明白なアイドルグループにいた松井が垣間見える短編?

完熟(書き下ろし)
桃を食べる女に異常なフェティシズムを感じる男と、その視線になんとなく気づいてる妻。谷崎っぽいテーマ。

リアルタイム・インテンション(小説すばる 2019年4月号)
動画配信をしている人びとの面白可笑しい会話。これはあんまり自分は受けつけなかった。

拭っても、拭っても(小説すばる 2018年11月号)
ヒロインは30代でバリバリ働いてる。街で見かけた20代前半のふわふわした女の子が背伸びしてヒールを履いているのだが、踵に絆創膏が貼ってあるのが気になった。
女友達に聴いてみた。「彼氏と夜いい感じになったらどうするんだろう?」「逆にエッチしてるときに靴擦れの傷口見えてるほうがグロい」

彼氏に餃子を作ってると指に怪我。絆創膏をして料理を続ける。彼氏から感謝されるも、翌日になると彼母から「アンタのせいでお腹を壊した」と苦情の電話。彼からも「育ちの悪い女は不潔だ」と電話で一方的に別れを切り出される。

女の子のファッションを上から下まで瞬時に観察し毒を吐く。松井玲奈はもう今現在28歳になってるので恋愛小説を書けば、その夜の生活まで想像して書くことはもはや普通のことなのかもしれない。

巻末筆者紹介ページがわずか一行。「松井玲奈 ― 役者。1991年7月27日生まれ。愛知県豊橋市生まれ。」とだけ書いてある。

乃木坂高山と違って松井は純文学っぽい作風でいくのかもしれない。自分としては「ハンドメイド」「完熟」「拭っても、拭っても」の3作は良いと思う。芝居の仕事で得た女優ならではの映像感覚だろうと思う。

松井玲奈は個性的な風貌でオタク趣味を持ってて内面が面白い。てっきりふわふわした少女だと思いきや、観察眼は鋭いようだ。文章も上手。

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