2020年1月14日火曜日

山下美月「日日是好日」(2018)

樹木希林出演の遺作映画「日日是好日」(2018)を見る。監督脚本は大森立嗣。

主演は黒木華のようだ。こどもが20歳大学生になるまでを一瞬で描くのが潔い。大学でまだなにも夢中になれるものを見つけられない女子大生。
そしてその従妹が多部未華子。田舎から上京し独り暮らし。生真面目な黒木に対して要領のよさそうな娘。このふたりが適度に美人すぎなくてよい。

家族の思い付きと勧めで近所の茶道教室に通う。両親も茶道の知識が何もない。この間の説明がとても簡単。茶道をまなぶきっかけに特別なものなんてない。そのへんがむしろリアル。

この映画の良いところが黒木多部姉妹のように視聴者も同じように茶道を基礎から一緒に学べるところ。ヒロインの心の声や戸惑いが視聴者そのもの。

茶道の先生樹木希林がコーチングとしてとても理想的。飄々として暑苦しくない。あらゆるコーチングは茶道のようにあるべき。この先生が樹木希林そのものに見える。「お茶はまずカタチなのよ」

さらに素晴らしいところが邦画にありがちな余計でムダなウザ演出とかほとんどないところ。邦画にありがちダサ脚本も感じない。
だがやっぱり現代娘を表現するためにカラオケシーンなんかもある。このシーンはちゃらちゃらしてる。現代娘ふたりは海外旅行や就職のことなど相談したりする。

季節がどんどん変化していく。季節ごとに挨拶をする。黒木多部ふたりはどんどん大きな茶会へ進む。多部は就職する。黒木は出版社アルバイト。

中盤になると新しい生徒も加わる。これが信じられないおっちょこちょいミスで笑いを誘う。ここがちょっとやりすぎかもしれない。
さらに黒木は何かを学んでいく。映画のテンポと間合いが心地よい。ムダがない。これが茶道ムービーか。
ヒロインが10年選手の30歳になったところで高1新人生徒ひとみちゃん(山下美月)登場。
この子が素人だったのだが、やがて素晴らしい素質を見せ始める…という役どころ。ほぼワンシーン(30秒ほど?)の出演でありながら美月が素晴らしい存在感。ちなみに美月は高校入学から乃木坂加入までの短い期間ではあったが茶道部に在籍していたらしい。

ヒロインはフリーライターに。やがて婚約者の裏切りで結婚に至らず。そしてまた新しい恋。ひたすら淡々と季節が移ろう。そして父死亡。ヒロインにはお茶が心のよりどころ。
最終的に24年経過してもまだお茶。とくに何も起こらない。茶の湯の思想を示す映画。
それほど面白い映画とは言えないのだが、見てよかったと言える映画ではある。

樹木希林さんは勝手に100歳ぐらいまで生きると思っていた。子供の頃から見ていた人がある日突然亡くなるのは悲しい。

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