2019年12月16日月曜日

新田次郎「きびだんご侍」

新田次郎「きびだんご侍」(昭和63年新潮文庫)という本を見つけた。7本の短編歴史小説からなる1冊。では順番に読んでいく。

豪雪に敗けた柴田勝家(昭和39年)
清須会議から賤ケ岳の戦いまでの勝家と秀吉の心理戦。ああ、雪が降り始めるのがもうちょっと遅ければという勝家の嘆き。

佐々成政の北アルプス越え(昭和43年)
この話はどこかで読んだ記憶が…と考えたら、「点の記」にもこのエピソードが出てくる。佐々成政が家康と連絡を取るために冬の立山を超え、120人が命を落とす。家康は成政を時代遅れの人物と嗤う。これを読む限り、短気で凡庸な人物。

黍団子侍(昭和48年)
新田が想像力を膨らませて書いた実際にあったかもしれない話。侍として戦いに参加する資格のない小作人が4回目の川中島合戦に参加する話。

凶年の梟雄(昭和46年)
毛利元就に兵糧ロジスティクスで敗れた陶晴賢

明智光秀の母(昭和46年)
丹波の八上城を攻めた光秀。多くの餓死者を出しながら籠城を続ける波多野秀治を説得するためにキリシタンである光秀の母(実母でない)が山を登る。だが光秀は波多野兄弟を調略だまし討ちで磔。結果、光秀の母も磔…。
自分、この史実をまったく知らなかった。来年のNHK大河に主役は明智光秀だが、こんな人物では出来が思いやられる。

妖尼(昭和46年)
春日局亡き後、大奥で権勢をふるう祖心尼は60になっても45歳ぐらいにしか見えない妖尼だった。屋敷の片隅に兵法軍学者由比正雪の道場があることに老中松平信綱は気づく。幕府の浪人対策の陰謀。

最後の叛乱(昭和34年)
蝦夷に上陸した和人は早々にアイヌ人の男たちに酒の味を覚えさせた。アイヌ人同士の勢力争いに乗じて、商人や砂金堀といった不逞の輩は横暴を極めて行った。
和人の知略と謀略と刀槍銃になすすべなく騙され敗退していくアイヌの側に立った鷹侍の、幕府による最後の蝦夷地支配の完成への抵抗と叛乱を描いた英雄譚ロマン。悲しく切ない。

個人的に一番だと感じたのは「最後の叛乱」。まるで映画みたい。

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