2019年9月2日月曜日

北山猛邦「先生、大事なものが盗まれました」(2016)

北山猛邦という作家の本を初めて読む。「先生、大事なものが盗まれました」(2016)という講談社タイガ文庫の書きおろし。

これ、表紙を見て高校を舞台にした日常ミステリーラノベだろうと思っていた。間違ってた。ファンタジーだった。

正三角形の形をした離島「凪島」には3つ高校がある。島外へ進学する子を除いて多くが、灯台守高校、探偵高校、怪盗高校の3つに進学する。

エリート校の探偵高校を卒業すると多くが探偵か諜報員になるw
黒いあざのある子は何かを盗む能力があり怪盗高校へ進む。
ヒロインは島の北端にある灯台守高校へバスで通う。何かを盗まれると胸のペンダントが光るw

通常のミステリーは「誰が?」「どうやって?」が謎となるのだが、この本では「何が盗まれた?」のみが問題。

じつは担任の先生が島の伝説の怪盗フェレスw ヒロイン雪子は探偵高校と怪盗高校に通う幼なじみと一緒に偽怪盗フェレスを追う。

この本の設定と世界観が他にない特殊なもの。3つの短編から成るのだが、これは順番に読むべき。

なにせ盗まれるものが「概念」w クロサワ監督の「散歩する侵略者」の宇宙人みたいな。エンデの「モモ」のような。

第1話で盗まれるものと動機が空前絶後。こんなものを盗んだ怪盗を見たことも聞いたこともない。まるでSFだし童話なので映像化もアニメじゃないと無理。

第2話も登場人物が何を盗まれたのかわからない。読者はなんとなく違和感を感じるようになってる。
第3話だけは他と雰囲気が違う。凄惨な殺人事件で本格っぽい。

自分は第1話と第2話が好き。登場人物たちも個性的で読んでいて楽しかった。
なんとかシリーズ化してドラマ化してほしかった。

2 件のコメント:

  1. 『クロック城殺人事件』で21世紀デビューの北山猛邦ももうずいぶん長い間消えることなく書き続けていますね。なのに、いまだに若々しいイメージはその作風のせいでしょうか。
    背景が異世界や終末世界。世界の果ての図書館での殺人。時計塔だらけのクロック城。少年検閲官・・・etc。イメージは強烈なのにアニメのようには軽くない。
    どんな状況であろうとこの人の根本は本格ミステリー。それも「物理」トリック。
    気が付くと同時期の西尾維新と違って、いまだに新刊が出ると買い続けています。
    『オルゴーリェンヌ』(『少年検閲官』の続編)の評価が世間では高いようですが、わたしは短篇集『私たちが星座を盗んだ理由』(講談社文庫)が好き。特に表題作はメルヘンに見えて、超現実的な結末がショッキング!
    あと雇われて、指定された高校に秘密に転校しながら、そこの学園の凶悪事件を解いていく女子高生探偵のシリーズが大好きでした。面白いのに雑誌掲載のままなのが残念。噂だけはあったのに、もっと売れなければ単行本化は駄目なんですかね。

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    1. クロック城はいちど手に取ったものの未読。「少年検閲官」は評判良さそうなので読んでみようかと。
      「星座を盗んだ」はまだ出会えていないので新刊で買っちゃうかも。
      これから北山猛邦は書店へ行ったら棚をチェックしようと思います。

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