2019年9月12日木曜日

江戸川乱歩「湖畔亭事件」(大正15年)

江戸川乱歩「湖畔亭事件」(大正15年)を読みたくてこの本をとった。角川ホラー文庫2000年版「孤島の鬼」に収録されているもので読む。112Pの中編。

「D坂」「心理試験」などの短編を次々と発表していた乱歩第1次量産時代の作品だが、それほど有名じゃない気がする。自分も今回この本を手に取るまでまったく知らなかった。

少年時代からレンズと幻燈に魅せられた陰気な男は大人になって覗き魔になっていた!w
手の込んだ方法で光を屈折させ自分の部屋の壁に画像を映し出すという仕掛けを施す。今で言えば完全に盗撮カメラ。

そんでもって湖畔の宿に宿泊し、風呂場の脱衣所にもその仕掛けを夜中に忍び込んでセットする。
部屋の隅でその不思議な映像をひとりで愉しむ。女中に見つからないように工夫する。

或る夜、裸女の背中に短刀がひらめき鮮血が流れる映像が大写しになる。これは!?と思い悩んだ末に風呂場へ行ってみるも何も起こっていない。
途中で大きなトランクを抱えた金慢紳士と、やはりトランクを抱えた付き人のような男が慌てて旅館を出ていく場面も目撃。

悩んだ末に、同じ旅館に投宿している画家だという河野に恥ずかしい趣味も打ち明けて相談。ふたりで探偵を気取って犯人捜しを始める。風呂場に大量の血痕を発見する。
どうやら芸者がひとり行方不明になっているらしい。だが、死体はどこからも発見されない。トランクを抱えて宿を出たふたりの行方も知れない。

警察の捜査がひと段落した後、覗きの仕掛けをそっと片づけて一安心w
怪しい人影を追いかけ捕り逃したり、旅館の主人の財布が見つかったり、湖の対岸の集落で人を焼く臭いがすると騒いでいる…などの情報を得る。

やがて河野はひとつの結論に達して…という話。
読んでいて、そのもっともらしい真相は本当の真相じゃないだろうなと思っていた。その通りにラストで急転。

これ、連載第1回から好評だったものの、乱歩先生はあまり自信を持ってなく、連載も早めに終了したらしい。妖しさと幻想怪奇がやや不足。あまりに合理的にささっと幕が降ろされる。
ちょっとモヤモヤするけど驚きがあったし、自分には十分に面白かった。

0 件のコメント:

コメントを投稿