横溝正史「七つの仮面」(昭和54年 角川文庫)を読む。7本の短編を収録。すべて昭和30年代に発表された金田一耕助探偵もの。これが初の単行本化。すべて初めて読む作品。では順番に読んでいく。
「七つの仮面」(講談倶楽部 昭和31年8月)
聖処女とその信奉者である醜い女。餓狼のごとき男たちの欲望に弄ばれ転落…という女の独白形式。だが真相は…という話。秘密を嗅ぎつけた金田一さんが不気味。
「猫館」(推理ストーリー 昭和38年8月)
日暮里駅から坂を上った山の途中にある元写真館で、女占い師と猫、同居する婆や、内弟子の凄惨な死体が次々と発見され…。
「雌蛭」(別冊週刊大衆 昭和30年8月)
女からの匿名の電話によって渋谷区H町の高級アパートの一室にハンドバッグを取りに行く金田一さん。ズボンにアロハシャツ、ハンチング帽にべっ甲メガネという変装w そして顔を塩酸で焼かれた男女の死体を発見。
古典的な被害者と加害者の入れ替わり。悪女のたくらみの露呈。
被害者の男が元薬剤師で流行作家(サディスト)って、横溝先生がモデルじゃん!
前科者ハンサムバーテン多門六平太という人物が登場する。これは金田一ものに登場する多門修と同一人物だろうと思うけど、なんでそんな名前?
「日時計の中の女」(別冊週刊漫画タイムス 昭和37年8月21日)
その屋敷を買った流行作家の妻はノイローゼ?前所有者がサディズム変態画家で妻を殺して庭に埋めて自身も交通事故死?
最後はなぜか関係者討論という形式。なんで?って明確には答えない。それが戦後民主主義。
「猟奇の始末書」(推理ストーリー 昭和37年8月)
金田一さんの旧制中学時代のセンパイの画家の別荘での事件。いたずらでボウガンで矢を崖に向かって射たらその付近で胸に矢の刺さった死体が発見される。
これは20分ほどのドラマのあらすじという感じ。それほど完成度の高いものでもない。金田一さんが水着姿だと?
「蝙蝠男」(推理ストーリー 昭和39年5月)
大学受験勉強中の女子高生が、向かいにあるアパートの一室内に住む若い女性が複数の男を部屋に引き入れての情事を目撃していた。そして冬の真夜中、蝙蝠のような男の影が女を短刀で殺す場面を目撃。
「薔薇の別荘」(時の窓 昭和33年6~9月)
親族一同と弁護士、そして金田一探偵を北鎌倉の別荘へ集めた戦後派の女傑・マダム鶴子にはある企みがあったらしいのだが、客人たちの前に姿を現さず部屋で死体となっていた。
マダムの右腕のごとく勤めていた美枝子は、警察と弁護士から知らないうちにマダムの養女になっていたことを知らされ容疑者にされる。
とても古典的なアリバイ作り。これは10代の読者でも早々に見破るかと。登場人物のキャラクター像はいかにも横溝正史らしい。
すべて金田一探偵が急転直下サクッと事件を解決。ページをめくるとすでに事件が解決というパターンが多い。物足りなく感じる読者もいるかもしれない。短編で金田一ものを読みたい人向け。
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