2019年6月17日月曜日

エラリー・クイーン「ニッポン樫鳥の謎」(1937)

エラリー・クイーン「ニッポン樫鳥の謎」を井上勇訳1961年創元推理文庫版で読む。
THE DOOR BETWEEN by Ellery Queen 1937
この作品は雑誌連載時に「The Japanese Fan Mystery」とされていたものが出版時に「The Door Between」と改められた。本来なら国名シリーズに加えられるべき1冊だったのだが今日ではエラリーオタには国名シリーズと認められていない。

たぶん日米関係が悪化していた時期。出版社がニッポンという名前を入れたくなかった?
でも日本で売るなら「日本と関係がありますよ」アピールするためにタイトルにニッポンを入れたい。

樫鳥って何だ?調べてみたらカケスのことらしい。密室で殺害された流行作家カーレン・リース(東京帝国大学教授の娘で日本から米国へ帰国)が鳥かごでカケスを飼っていたからこのタイトルにしたっぽい。

主人である流行作家カーレンに茶の湯をふるまわれるエラリー。癌研究の権威で著名な医学博士マクルア氏とカーレンは婚約中。さらにその茶の湯パーティーで博士の娘エヴァは青年医師スコットと知り合う。こちらもいい関係。後日婚約。
エラリーとマクルア博士も後日、欧州で学位授与や講演から戻る船で知り合い意気投合。

エヴァはカーレンにスコットとの婚約を報告しに行くのだが、その場で死体を発見。だが、その直後に現れた私立探偵テリーに犯人と間違えられる。だが、読者はテリーの方が怪しく見える。エヴァを脅して偉そうにしてるけど、オマエだって怪しいだろ!
あと、キヌメなんてヘンテコな名前の琉球出身ばあやも怪しい。

寝室から屋根裏部屋へ抜けるドアの閂が閉まっていたことで密室殺人になってしまっている。エヴァは最重要容疑者で大ピンチ。狂気のハサミの片割れに指紋も残っていて、血の付いたハンカチを燃やした跡も。

これ、事前につまらないんだろう。だから誰も話題にしないんだろうと思っていた。だが、自分としてはなくはないなと感じた。それほど退屈しなかった。味わいのあるラストになってる。

この作品は日本人のほうが読んでいて居心地が悪くなる。エラリーくんの「日本人は…」という知ったか知識が痛い。
それと、この作品のアイデアのいくつかは「エラリークイーンの事件簿1」収録の「消えた死体」で再利用されている。「ニッポン樫鳥」を読む人は「事件簿1」は読まなくていい。

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