2019年3月5日火曜日

越谷オサム「いとみち」(2011)

越谷オサム「いとみち」(2011)を、平成25年新潮文庫版で読む。100円で購入。

津軽で育った不器用16歳高校生ヒロインの青森メイドカフェバイトの日々。将来への不安、そして現実。
店長、オーナー、メイドのバイト同僚、三味線名人の祖母、これもやはり人間模様と会話が主体のドラマ脚本っぽい青春小説。社会へと一歩足を踏み出す冒険小説。

青森ローカル色の強い青春ドラマ。全編が津軽方言を書き起こしたような会話なので、読むのには多少の慣れも必要。東北訛りに慣れがないと語感のリズムとイメージがつかみにくいかもしれない。
アニメロリ声メイドカフェでなく、方言メイドカフェというアイデアはかなり良い。

店長もオーナーも同僚もみんな人間として立派。実際の社会はたぶんこんなもんじゃない。生き馬の目を抜き若者を搾取するのが日本社会。

終盤で現実的な事件が起こる。銀行との融資の話し合いの現場のようなこともある。

これ、書かれたのが震災の年。文庫化が2013年秋。どうしても「あまちゃん」が頭に思い浮かぶ。ヒロインはどうしたって能年玲奈で脳内再生。

だが、16歳という年齢とロリ容姿を考えると、ひらがなけやき坂の柿崎さんの姿も脳裏に浮かぶ。

作者にはドラマ化への期待と計算もあったかもしれない。どうしたってライトなアイドル主演ドラマの脚本みたいな感じがする。こういうのが好きな読者もいるだろうと思う。

自分にはあんまり合っていなかったかもしれない。もう少し会話部分は減らして文芸書っぽかったら好きだった。
やはり「階段途中のビッグ・ノイズ」が越谷オサムのベスト。気に入ってる作品もいまのところそれしかない。これでしばらく越谷オサムの本はいったん置いておく。

0 件のコメント:

コメントを投稿