THE LABOURS OF HERCULES by Agatha Christie 1947エルキュール・ポアロが颯爽と事件を解決する12の連作短編からなる一冊。
本の冒頭、自宅で友人を招いてワインしながら「なんでエルキュール(ヘラクレス)なんていう異教徒みたいな名前なの?」とか事情を聴かれてる。なんとポアロには兄弟もいたらしい。
「あといくつか事件を解決したら家でゆっくりナタウリを育てるよ」
たぶんこの本はポアロを知るうえで重要な短編集。
12の短編すべてにギリシャ神話「ヘラクレスの十二の難行」にちなんだ名前がつけられている。なので後からどんな話だったのか?タイトルから思い出すことが馴染みのない日本人には難しい。
「ネメアのライオン」身代金目的のペット犬誘拐事件とその意外な真相。ポアロがいいひと。
「レルネーのヒドラ」妻毒殺疑惑の噂で困ってる医者をポアロが助ける。
「アルカディアの鹿」若い男の前から姿を消した女中とその真相
「エルマントスのイノシシ」スイスの山岳リゾート地で指名手配殺人犯を探す手伝いをさせられるポアロ。
「アウゲイアス王の大牛舎」英国政界でのスキャンダルをもみ消すのもポアロの仕事
「ステュムパロスの鳥」英国政界の若きホープがスロバキアの湖のほとりリゾートで巻き込まれた恐喝事件の意外な顛末。
「クレタ島の雄牛」祖父に精神病がいるから婚約解除?という前時代的な誤った常識による事件。
「ディオメーデスの馬」麻薬パーティーに巻き込まれた将軍の娘、その家族、意外な真相。
「ヒッポリュテの帯」ルーベンス絵画盗難とロンドン-パリ間の列車から失踪した女子生徒。
「ゲリュオンの牛たち」第1話に登場したミス・カーナビが再登場。怪しげな新興宗教に潜入捜査。
「ヘスペリスたちのリンゴ」美術品コレクターの富豪が手にするはずだったボルジアの酒盃の行方。
「ケルベロスの捕獲」混雑するロンドン地下鉄でポアロが再会したロシアの伯爵夫人が経営するナイトクラブでの麻薬捜査。
どれも特筆するようなトリックとかアリバイとかまったくない。ポアロというキャラのユーモアと意外な展開を見せるドラマ。
殺人事件が発生するのは「レルネーのヒドラ」「エルマントスのイノシシ」ぐらいしかない。
「ステュムパロスの鳥」は自分には予想外。物事は最初の理解の段階で間違えるようにミスリードするのがクリスティ。
「アウゲイアス王の大牛舎」では糞マスコミを政府が罠に嵌めるのだが、もし今の日本がこれをやったらどうなるの?
「コンフィデンスマンJP」「リーガルハイ」のようなドラマテイスト。各話30分全12話のドラマにできそう。名探偵ポアロを長編で何冊か読んでから読むべき一冊だと感じた。たぶん大人の読者じゃないと楽しめないと思う。
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