2019年2月21日木曜日

カーター・ディクスン「ユダの窓」(1938)

ディクスン・カーの文庫本がもう長い間ぜんぜん発見できない。だが、カーター・ディクスン名義の「ユダの窓」(砧一郎訳)1978年ハヤカワ・ミステリ文庫版(2001年第9刷)を先日見つけた。100円だったのにわりとキレイな1冊だった。速攻レジへ。
THE JUDAS WINDOW by Carter Dickson 1938
婚約者の父を訪ねていった青年が、勧められるままウィスキーを口にしたとたんに気を失う。目覚めると、義理の父になるはずだった人物が、壁に掛かっていたアーチェリー用の矢で胸を刺されて死んでいる。

しかも内側から鍵がかかっていて、隣家に面した窓もしっかり閉じられてている。そこにその家の執事、隣に住む友人、秘書がやってきてドアを叩く。どうやっても犯人は自分…という状況に置かれて絶体絶命。

これ、冒頭からほぼずっと法廷。被告弁護人がヘンリー・メリヴェール卿
英国の法廷なので裁判長も訴追側弁護人も被告側弁護人も法衣にカツラというスタイル。

証人尋問やらでだんだんと事件が見えてくる。どうしようもないほど被告に不利な状況。メリヴェール卿に何か策はあるのか?そんな様子がまったく見えない。

「ユダの窓」って何?どうやら英語圏では悪魔にしか見えない窓を指すらしい。密室のようでいて、どこからか石弓で矢を放つ方法でもあるのか?

真ん中をちょっと過ぎたあたりで事実関係がガラッと変化。そう見えていたことは実はそうではない。え、人違い?!

これ、カーの代表作という扱いらしい。この古典的密室トリックはかなり有名らしい。だがそれ自体はどってことないように感じた。
登場人物たちが局面ごとにいろいろ複雑にややこしいことをしていた。それに英国の法廷戦術。馴染みがなく理解しがたい。

メリヴェール卿の説明がとてもわかりにくい。訳も古臭さを感じたけど、何よりカーの文体のリズムが自分とは合っていなかった。読んでいて心地よくない。
だいたいのことがわかってからの展開に驚くこともない。カーは短編のほうが良い気がする。

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