2018年12月21日金曜日

司馬遼太郎「国盗り物語」第3-4巻 織田信長 編(1967)

ひきつづき司馬遼太郎「国盗り物語」第3-4巻 織田信長編(1967)を読む。

自分が今まで読んだ本や映画やドラマだと信長は怖い上司か恐ろしい魔王。信長が尾張を支配していく様子を描いた大河ドラマを見ていない。

第3巻は斎藤道三の一人娘・濃姫が信長に嫁ぐ場面から始まる。うつけもの信長なら、いつか尾張を併呑するのも簡単だろう…という魂胆の斎藤道三。

婿に一度会いたいと会合をセッティング。この会見の様子がちょっと面白い。信長のだらしのない服装を見て平服に着替えるも、礼服で現れた信長の若武者ぶりに不機嫌になる道三。

だが、爽やかな信長に自分と同質なものを見抜いた道三は娘婿を支援していく。
第3巻の真ん中あたりで道三は偽子・義竜に討たれる。取り乱す信長。

斎藤道三が眼をかけたもう一人の若者が明智光秀。この本のもう一人の主人公。光秀は美男だったらしい。
道三崩れによって諸国を流浪。京都で足利将軍の元を訪ねて細川藤孝と知り合う。次に一乗谷の朝倉を訪ねるも5代目義景は凡庸。

そのころ京都を武力で支配していたのが三好長慶松永久秀の極悪コンビ。松永が将軍足利義輝を殺害。将軍と接近できたおかげで朝倉家でそれなりに処遇してもらえてる明智光秀は危機感。幽閉されている足利義昭を救出する場面では獅子奮迅の大活躍。

美濃稲葉山が藤吉郎&竹中半兵衛コンビの活躍で織田方に落ちる場面で第3巻終了。

そして第4巻。国盗り物語全4巻で第4巻が一番分厚く608ページもある。織田信長という人を語るには最低これぐらいのボリュームが必要。

だが4巻も明智光秀がほぼ主役。ずっとめんどくさい上司でしかない足利義昭と織田信長との板挟み。信長の合戦を詳しく描いていない。家臣のこともそれほど触れない。

信長は光秀を有能だとは思っていたので重用はしたけど、理屈っぽく京都上流階級の常識に毒されてるところが大嫌い。一方で光秀も「何もわかってないくせに」と心で信長を蔑む。司馬が描きたかったのはそこ?

信長は結局最後まで何も好きになれる要素がない。元祖パワハラ上司ブラック企業。ケチで自分のことしか考えていない。こんな人の元で働いていても人生をムダにするし虚しい。
ポルトガル人宣教師が本国にあてた手紙で日本の労働力の安さに驚く記述があった。日本は中世も現代も変わってないなと思った。

道三、信長、光秀、みんな最期はあっけない。
司馬は最後に細川藤孝(細川幽斎)はその後の徳川から維新まで生き残ったなあと感嘆して物語を終える。

2020年の大河ドラマは明智光秀らしいけど、この本のように描けば面白くできるだろうと思う。

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