2018年11月28日水曜日

綾辻行人「霧越邸殺人事件」(1990)

綾辻行人「霧越邸殺人事件」(1990)の平成7年新潮文庫版(平22年第24刷)をやっと見つけた。100円。
以前まだこの作家の本を1冊も読んだことがなかった時分にこれを1回手に取りかけ棚に戻してしまい後悔していた。

2014年に角川文庫から「完全改訂版」が出てるらしいがそちらは上下巻。角川と新潮は表紙イラストのセンスがまったく違う。新潮文庫版は1冊なのでこちらを選んだ。
なんと688ページという大長編。
館シリーズを「黒猫館」まで読み進めたところで手にした番外編。

信州で慰安旅行をしていた小劇団。帰りのバスが途中で故障。ホテルに戻るか街まで歩くか?後者を選んだら途中で天気が急変し吹雪になって道に迷う。
雪中をさ迷い歩き生死の境を彷徨。すると湖が!立派な洋館が!ああ、助かった!

だが、その洋館の主人は姿を見せず執事やお手伝いはみんな無愛想で無表情。なにかヘンだ。
吹雪が一向に止まない。電話も不通。そんな状態で連続殺人が起こるという最悪なクローズドサークル型ミステリー。今まで読んできた綾辻作品と似たような既視感のある展開。

偶然泊めてもらえることになった初めて入る邸内のモノが劇団員たちの名前と奇妙に符合。女優とそっくりな肖像画まで!?
やがて起こる連続「北原白秋の童謡」見立て殺人。(そういえばBSでやってた「悪魔の手毬唄」座談会で綾辻先生が「昔は見立て殺人という言葉はなかった」と言っていた)

この本がペダンチックに冗長すぎ。主人公らしき劇団演出家は骨董が本業でとにかく蘊蓄を語りまくる。(だがこれはキャラ設定上意味があったことだと最後まで読んで納得)
作家である「私」とコンビを組んで相談してるのだが、「私」の存在感が希薄。

第7章「対決」は一同を一室に集めて真相を語る解決編だが、エラリーの影響を受けたに違いないガチロジックで犯人を名指し。(だからこいつは教養をひけらかすのか)

残りページの目分量から「どんでんがえし」があるはず!と思っていたら、やっぱりか!名探偵を超える名探偵が登場し驚愕!
真犯人との対決シーンは暑苦しい舞台作品を見ているかのよう。

この作品は幻想とファンタジー要素が強いみたいなレビューも目にしてた。たしかに偶然の符合とか本格が好きな人にはどうでもいいかもしれないけど、批判されるほどのものでもない。

一番の被害者はこれからもこの家に住まないといけない家族と使用人じゃん。

いやあ参った。綾辻行人をこれまで6冊読んできて、どれも期待以上で失望させない出来栄え。20代でこんな作品を残すとか天才の所業。

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