2018年9月21日金曜日

エラリー・クイーン「ギリシャ棺の秘密」(1932)

エラリー・クイーン「ギリシャ棺の秘密」(1932)の2013年(越前・北田新訳)角川文庫版をようやく手に入れた。わりとキレイな1冊なのに100円で手に入れて申し訳ない。
THE GREEK COFFIN MYSTERY by Ellery Queen 1932
こいつは世間の評判が割と良いようなので期待して読む。
ニューヨークの美術商の葬儀の場面からスタート。直前になって書き換えた遺言状が入った手提げ金庫が金庫の中から消えている!と弁護士が騒ぎ出す。なんでも経営権の欄が直前に書き換えられたらしい。

警察が邸内を捜索するもどこにもない。大学を出たばかりで自信満々青二才のエラリーくんが「じゃあ、棺の中にあるにきまってる」と指摘。棺を掘り起こすと、今度はなんと、死んだ美術商の遺体と一緒に、見ず知らずの男の死体も折り重なって入っていた!こいつは誰だ?!

殺人事件としてつかみは強烈な印象で良い。あとはニューヨーク市警のクイーン警視と検察の面々が暗い顔を突き合わせて悩む。関係者に話を訊く場面は一時的に毎回退屈になる。

やがてエラリーくんは自信満々に「ティーカップ問題」から、美術商が死んだ前夜の訪問客は2人と見せかけて実は1人で、美術商を脅迫していた男が美術商に殺されたと自信を持って推理を披露。だがしかし!

この推理が2つの証言によってあっさり否定される。壮大なうぬぼれ屋のエラリーが鼻っ柱を折られる。ここまでが半分。

じつは、レオナルド・ダ・ヴィンチの盗難絵画をめぐる闇取引での殺人事件か?!

容疑者が2回3回と変わっていく。局面ごとに真犯人の行動が変わっていく。エラリーくんの数式を展開するかのようなガチガチロジックに付き合いきれなくなるw 

タイプライターのキー問題とか、この時代の英米人しか馴染んでない。よくわからない。
それに、16世紀のキャンバス画って丸めたりできるの?そんなことして損傷しない?このへんも読んでいて疑問。

真犯人は名探偵以上に高度で難解な偽の証拠を残す。自分は今まで知らなかったのだが、これ、「後期クイーン的問題」と呼ぶらしい。

真犯人はあの大物セレブでないとすれば、自分がこれまで読んできたクリスティー&エラリーのパターンから言って、アイツだろうなと思ってたw 
だが、ほとんどの人はエラリーくんの論理による消去法ではたどりつけないだろうと思うけど。

戦前のアメリカの警察は(今もそうかもしれないが)とても尊大で当たりが強い。関係者への聴きとりと、部下の警部たちへの有無を言わせない命令ぶりを見ると、この時代のアメリカも全体主義っぽいなと感じた。
クイーン警視のやりかたが強引。エラリーくんの3番目の推理に対しては怒り心頭のダメ出し。

それにやっぱり長すぎる。細かすぎる。展開が退屈。もっとシンプルにして半分に圧縮してくれ。

ちなみに自分がこれまで読んだエラリー・クイーン国名シリーズを面白かった順に並べると
1.オランダ靴 2.フランス白粉 3.エジプト十字架 4.ギリシャ棺 5.シャム双子 6.ローマ帽子 かなあ…。
「スペイン岬」「アメリカ銃」「チャイナ橙」はまだ一度も出会えていない。

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