2018年7月22日日曜日

太宰治「新樹の言葉」

太宰治「新樹の言葉」の新潮文庫版を手に入れたので読んでみる。これは太宰30歳~31歳の甲府時代に書かれたものがメインの短編集か?

ぜんぜん小説のネタがないのでとにかく机に向かってなんとか無理矢理に原稿を埋めていく感じの強い短編だらけ。物書きになってしまった自分への卑下と自虐だらけで痛い。

カルタ形式の「懶惰の歌留多」とか「春の盗賊」とかフリースタイルすぎて全然頭に入ってこないw

あれ?以前に読んだ短編とよく似た、ダブった内容が垣間見える。心中しようとした女性のことを書いてる「秋風記」とか、むかし虐めた女中が出てくる「花燭」とか、乳母の息子との再会を描いた「新樹の言葉」だとか、31歳の太宰には故郷である津軽と、上京後の絶望的に卑屈な自分の生い立ちぐらいしかネタがない…。頭がよいのに金に困った卑屈な人の独り言は読んでいて困惑するw

「葉桜と魔笛」はわりと爽やかで味わい深く好きな短編。

甲府盆地の暑さに参った太宰夫妻が湯村温泉へ行く「美少女」にはちょっと困惑した。
え?混浴?
孫娘連れて病後の療養に来てる老夫婦もそこにいるのだが、10代の美少女のハダカをしっかりガン見観察してる30男太宰!w のちに散髪屋の主人の娘だと知ってニヤニヤしてる太宰が気持ち悪すぎる!w こんなん書いていいの?

故郷津軽の兄弟たちを描いた「愛と美について」「兄たち」も楽しく読めた。体の弱かった三男の兄の恋の相手もやっぱりカフェ女給。今の若者たちはAKBとか乃木坂とか握手アイドルと疑似恋愛できてある意味しあわせ。

「火の鳥」を読んでいてわかりにくさに困惑したので巻末解説を読んでみたら未完の作品だった。
太宰が帝国大学の学生時代に訪れた三島の思い出を語る「老ハイデルベルヒ」も味わい深い。

とにかく異様に読点が多いのが太宰の特徴なのだが、この本は全体的にとくに多く感じた。そのへんの研究書なんかは読んだことがないのだが、これは青森県人ならではの話し言葉のリズムも反映されてるの?

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