横溝正史「夜光怪人」の昭和53年角川文庫版を手に入れた。ページがだいぶ酸化して茶色い昭和55年の第5冊。100円でゲット。
戦前の横溝正史が生み出した「由利先生&三津木記者」を山村正夫氏が再編集しリライトしたジュブナイル金田一。
巻末解説を読んでもこの作品が書き換えに至った経緯は書かれていない。たぶん時代の要請。江戸川乱歩の少年探偵団と同じ作風。
金田一さんが主人公であったほうが売れるのかもしれないが、由利探偵の立場は?
上野のデパートから真珠の首飾りを盗み、鎌倉稲村ケ崎にあるという洋館での仮面舞踏会に侵入しダイヤのネックレスを盗む神出鬼没の夜光怪人。
三津木記者と御子柴少年が防ごうと奮闘するも、「フフフ」とあざ笑うように鮮やかに立ち去る。少年向け読物なのでまるで大人が読むようなリアリティはない。表現が時代を感じさせ古めかしい。
子供向けとはいっても、トランクの中から死体が見つかったりもする。何人か人が殺されている。
三津木記者と金田一耕助の対面シーンが感動w「ああ、あなたは金田一さん!」
このシーンもなぜかサーカス小屋。この時代の人々にとってサーカスってメジャーな娯楽だったんだな。
あと、夜光怪人のアジトが上野寛永寺の五重塔に出入り口があるとか興奮!w
もしつぎに上野動物園に行ったら、そこに注目してしまうだろう。
最後は瀬戸内海で海賊の財宝を探す。なんと獄門島と網元・鬼頭さんと清水巡査も登場。ここ、オリジナルからそうなのか?山村氏の創作なのか?調べてみたけど不明。
講談のごとく漫然として感心するような内容はまるでない…と思いきや、「夜光怪人」は他のジュブナイル金田一に比べればわりと読みごたえがある。
夜光怪人と変装の名人・大江蘭堂との関係は?!二転三転、面白い。
「謎の五十銭銀貨」という短編も収録。
新宿の易者からおつりでもらった銀貨の中から暗号文が出てきた!という話を雑誌に載せたところ、巻き起こる騒動。江戸川乱歩の「二銭銅貨」オマージュか?
小学生の主人公と同居してる作家のおじさんが謎を解く。それ、こども向け読物として正しい。短編としてわりと面白かった。ただ、暗号文がこども向けにしてもあまりに安易。暗号ですらない。
「はなびらの秘密」という短編も収録。
内容的に昭和初期に書かれたものを戦後に一部設定をリライトしたものかと思われる。戦後の日本には国家機密とか某国のスパイとかいないことになっているから。
主人公の少女が勇気も行動力もあって感心する。同居する祖父は日露戦争に出征した将軍。おじさんは防衛庁につとめる博士だが事故死。国家機密のロケットの設計図が紛失…。「混血児のスパイ」とか時代がかってる。設定上いろいろと無理がある。
でもやっぱりこの短編も面白かった。
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