2018年4月4日水曜日

横溝正史「支那扇の女」(昭和35年)

横溝正史「支那扇の女」の昭和50年角川文庫版のわりと状態の良い1冊を見つけたので買って帰った。とはいっても紙は酸化して茶色い昭和52年第7刷。100円ゲット。

事件は昭和32年8月、夜明け前の成城。パジャマにレインコート姿で橋の上から鉄道に身投げしようとするヒステリックな若い女が取り押さえられ保護される場面から始まる。袖口に血痕が?!
巡査と自宅に戻ると前妻の母親と女中が頭を斧でたたき割られて血の海。

「明治大正犯罪史」という本に掲載された明治21年の八木子爵家で起こった毒殺未遂事件で容疑をかけられた子爵夫人・克子。その愛人の洋画家が描いた肖像画が事件の鍵?
2度自殺未遂を起こした美奈子は夢遊病?夫である作家・照三の謎行動も判明し…。

これはもともと短編として昭和32年に発表されて後に長編へと書き下ろされた作品。
明治の毒婦と古いポートレート、墓を暴くという道具立てがカー「火刑法廷」も連想させる。

だが、最後はなぜか神宮球場での大捕り物。それ、必要?
しかも「まさかピストルを持ってるとは思わなかった」「自決用の毒薬をもっていたとは気がつかなかった」とか相変わらず詰めが甘い。

最後に金田一さんから明かされる説明も腑に落ちない。あの動機で関係ない2人を惨殺する?
ま、だからこそ怖いサイコパス事件なのかもしれない。68点ぐらいの作品。

そしてもう一編「女の決闘」という短編も収録。これは巻末解説を読んでも発表時期が書いてない。

緑ヶ丘での英国人英語教師夫妻のお別れパーティーで起こった毒殺未遂事件。作家の妻がソフトクリーム食べた途端に倒れて苦しんでる!金田一さんの機敏で適切な行動によって命は取り留める。
やがて金田一さんのアメリカ時代の友人主催の別のパーティー現場で作家が毒殺。

自分、こちらの作品のほうが「支那扇」よりも動機と行動に納得がいった。最後は往復書簡で真相を語ってるのが良い。金田一さんは外人パーティーにも袴姿。

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