2018年4月6日金曜日

アガサ・クリスティー「三幕の殺人」(1935)

アガサ・クリスティー「三幕の殺人」田村隆一訳1988年版ハヤカワ・ミステリ文庫初版を手に入れた。100円でゲット。
THREE ACT TRAGEDY by Agatha Christie 1935
この作品は創元推理文庫では「三幕の悲劇」、新潮文庫では「三幕殺人事件」というタイトルになっている。
自分、15ぐらいのとき新潮文庫でこいつを持っていたはずなのだが、今回読んでみて、犯人はなんとなく記憶にあったけど、そのほかはやっぱり1ミリたりとも覚えていなかった。こどもに戦前の英国のイメージはしづらい。

まず、引退した舞台俳優の家でのパーティーで、その土地の牧師が毒殺される。次に、ハーレイ街の精神科医が自宅でのパーティーでやっぱり毒殺。

有閑きまぐれ探偵ポアロは序盤と中盤に出てきて素人探偵にアドバイスするだけ。この作品では事件に巻き込まれた当事者3人が関係者たちに話を聞きにいく。
クリスティはこの作品でも若くてちょっとバカで魅力的な美少女探偵を用意する。そこはラブコメタッチで読んでいて面白い。

結局ポアロはパーティーを開いてちょっとした芝居をさせて関係者の表情を見るだけのことしかしてない。で、最後に驚くような真実を開陳。
実はアレがああなってたというトリックはクリスティ読者なら既視感があるかもしれない。だがそれでもやっぱりクリスティはどの作品でも大胆で印象的。この1作もやっぱりオススメ。

登場人物たちの会話がスタイリッシュでおしゃれ。それでいて小説として戯曲として読んでいて面白い。そこ、エラリーやカーやヴァンダインと違うところ。クリスティが今も世界中で売れてる理由がわかる。

けど、細部では強引な印象も受けた。オリバーという人物が第2の殺人現場となったパーティーに呼び出された手紙。あんなのに乗って行く?

クリスティの犯人は動機がドライな場合が多いけど、この犯人はとくに人間のクズw ええぇぇ~って動機で人を殺していた。ラストのポアロのひとことも良い。

ポアロはあえて下手くそな英語を使い、英国人が嫌う謙虚さのかけらもない人物を装うことで、「あ、こいつバカだ」と犯人を油断させて話を引き出す。ここ、見習いたい。

巻末の解説は訳者の田村隆一だけど、決して解説を先に読んではいけない。犯人も動機もトリックもわかってしまうから。
この訳者はべつに英語がそれほど得意じゃなかったけど戦争から戻って暇だからクリスティの翻訳を始めたって書いてる。ええぇ、そうなの?!

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