2018年3月21日水曜日

横溝正史「病院坂の首縊りの家」(昭和53年)

実はまだこいつを読んでなかった。横溝正史「病院坂の首縊りの家」の昭和53年角川文庫版が上下巻そこにそろっていたので買って帰った。1冊100円でゲット。

こいつを読むとすればこの杉本一文イラスト表紙版を手に入れようと思っていた。今回手に入れたものは上巻が昭和53年文庫版初版、下巻が昭和54年第3刷。

こいつを今日まで後回しにしていた理由、それは、市川崑映画版があまり好きじゃなかったから。市川崑金田一シリーズ全5作中、「病院坂」が一番自分にはしっくりこない作品だった。

上下巻を4日で読んだ。驚いた。映画と何もかもぜんぜん違うじゃん!

上巻は昭和28年生首風鈴殺人事件を扱う。文久年間から始まる法眼家と五十嵐家の家系図の説明から人が多すぎて自分を見失う。親切に家系図もあるけど、読んでいて誰が誰だかわからなくなる。

下巻では20年後の昭和48年にとぶ。等々力警部も警察を退職して探偵事務所を開いてる。
敏男と小雪のジャズバンド「アングリー・パイレーツ」の面々の描写が多すぎる…と思ってたら、本條写真館での殺人事件とホームセンターでの殺人事件の当事者になっていく。それ、映画にない展開。

自分は長年、原作よりも市川版の脚本のほうが上回ってると感じていたのだが、「病院坂」に限っては原作のほうが出来がよい。映画よりも原作のほうがはるかに納得できるストーリーになっている。

事件のエグさ、人間関係のおぞましさ、戦争に運命を翻弄された悲しみ、すべて横溝正史の本領発揮。横溝正史の代表作と云えると思う。
自分のように映画に納得がいかないで食わず嫌いしている人には読むことをオススメ。映画とは別のもうひとつの病院坂として新鮮な感じで楽しめる。

だが、事件解決に20年かかってる。長すぎる。冗長すぎる。ディテールが細かすぎる。
松本清張の「砂の器」っぽいかな…と思った。
結婚式場ホテルに関係者が集められ置時計から生首写真のスライドが投影され音声が流れ終わると爆発とかw 横溝正史らしくない。無駄をバッサリそぎ落とせば4分の1にできた。

横溝正史73歳から75歳の時期にあたる昭和50年から野生時代に22回連載されたもの。最晩年の1本。

この事件を最後に金田一さんは人々の前から姿を消す。多くない財産を処分してアメリカに渡ったらしいということがラストで簡潔に語られる。
オイルショックが始まった年。60代になった金田一さんが単独アメリカに渡ってどうなったのか?とても心配だ。

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