2018年1月11日木曜日

城山三郎「黄金の日日」(1978)

城山三郎「黄金の日日」という本がそこにあったので手に取った。1978年新潮社単行本の同年第8刷。100円で購入。
オビを見てわかるように昭和53年度NHK大河ドラマの原作。安土桃山時代の堺の貿易商・呂宋助左衛門の日々を描いた作品。

「黄金の日日」という大河ドラマがあったことはクイズオタだった自分は知っていたのだが、原作が城山三郎(1927-2007)だったとは知らなかった。

オビの写真が、え、松本幸四郎?! そういえば真田丸でも呂宋助左衛門を演じてなかったか?
調べてみたら一昨年の放送時、このことを知ってる人の間ではザワついたらしい。

堺という中世貿易港自由都市は日本の歴史上とても重要で、小学生でも名前を知ってるけど、自分は今の堺をぜんぜん知らなくてイメージできない。
堺は和泉国なので摂津や河内とは違う国らしい。廃藩置県後には堺県が存在してたってことは知っていた。
戦国の世も平和を保った自由都市なのに、それほど観光地にもなってない。たぶんそれほど中世の街並みが残ってないんだろうな。

堺商人たちから見た信長・秀吉とその時代が描かれいる。今井宗久・宗薫親子、千利休、天王寺屋宗及、山上宗二といった堺商人(茶人)たちと信長秀吉とのやりとりが描かれる。

信長はある日突然堺にやってきて「これからはオレたちに上納金を払えよな」ってまるでヤクザかNHK。酷いw
信長も秀吉も茶器コレクターで「名物狩り」をしていた。紹鴎や珠光の名物に大金をはたいて茶入れなんかを購入。ときに強引に献上させて。信長も秀吉も短気。
一方で助左衛門は茶器収集狂たちに冷ややか。

今井宗久の使用人だった助左衛門は高山右近、石田三成とも親交。小西隆佐・行長親子、松井有閑といった堺の代官たちのことも初めて知った。

助左衛門はその名の通りルソンとの貿易で活躍した人だったわけだが、ひょっとしてあんまり記録がない?
比叡山焼き討ち直後に突然ルソンに初めて漂流した件になっていて、しかもわずか2ページで「え?落丁?」って思ったw 展開が急すぎる。

助左衛門はルソン貿易で大金持ち。ルソンでその辺に転がってるタダ同然の壺を高値で売る…というくだりは「真田丸」でも松本幸四郎が説明してたな。
やがて堺に大豪邸を建てるのだが秀吉の不興を買う。山上と利休を殺した秀吉とは仲たがい。

だが、秀吉が死ぬまでルソンに逃れてカンボジアとの貿易をやって過ごすw これ、現代人も見習いたい賢い選択。嫌な奴からは離れて死ぬのを待てば良いw
だが、愛しいあの娘とはすれ違いの連続で生き別れ。

助左衛門という人はブレない信念を持っていたことはわかったのだが、貿易商として成功していく理由や過程に著者はあまり関心なかったのかなって思う。それに航海技術やらルソンの風土についての記述も少ない。ほとんどない。

歴史的事件を目撃して行動する助左衛門だが、それほど野性味あふれる男臭さや活き活きした活躍を伝えるような面白さには欠ける。歴史の要点のおさらいのようでもある。
淡々としすぎだが、あっさり薄味だからこそサクサクめくれる。

関ケ原から大坂の陣。助左衛門は高山右近とルソンで再会。信長の時代の堺は黄金の日日だったなあと回想する助左衛門。このへんは味わい深い。経済人から見た作品なので、荷動きを不自由にした秀吉家康は当然悪者。石田三成や小西行長は商人になっていれば才能をさらに発揮して死なずにすんだ。

日本とフィリピンにはこんな歴史があったのか!
自分の知らない側面から見た信長秀吉家康の時代の歴史ロマン。堺という街の物語。商人と権力者の物語。十分にオススメできる1冊。

助左衛門の仲間に石川五右衛門がいるのだが、この人がすばっしこいだけが取り柄のビビリでおっちょこちょい。せこい盗みをやっている。五右衛門ってこんな人だったの?
終盤でやっと盗賊一味率いて秀吉を殺そうとするも捕らえられて三条河原。

自分、高山右近という人をよく知らなかった。その点でもこの本を読んでよかった。
ちなみに、松本幸四郎は「豪姫」という映画で高山右近も演じたことがある。

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