2017年11月17日金曜日

ディクスン・カー「夜歩く」(1930)

ジョン・ディクスン・カー「夜歩く」(文村潤 訳 ハヤカワ・ミステリ文庫)を100円で見つけたので買って帰った。
IT WALKS BY NIGHT by John Dickson Carr 1930
表紙絵が時代を感じさせる。相当に古い本だと覚悟したが、昭和51年に出版されたもの。奥付に前の所有者の名前がゴム印で押してあった。ひょっとすると誰かの遺品かもしれない。

カー作品をこれまで何冊か読み進めてきたけど、初めてバンコランものに行き当たった。この作品こそがカー25歳の処女長編。こいつが評判がよく売れたので探偵推理作家になった。

パリの会員制クラブで若い公爵が首を切断されて殺されている。
1920年代パリの上流階級社交クラブがよくイメージできずに困った。当時のパリの社会風俗がまったくイメージできない。たぶん男はみんな髭をはやしてステッキを持ってる。

登場人物表を見ると、バンコランは「パリ警視庁の大立者。予審判事」と書いてある。大立者って今はあまり使わない言葉だな。
バンコランはあまり活躍してた印象がない。

密室、アリバイ、複雑な人物関係。とにかく頭に入ってこない文体だった。
訳が古すぎるもの原因だと思うけど、カーの文体も理由かもしれない。他のカー作品より意味を理解し難い。

「夜歩く」の怪奇趣味と、婚礼の日に首を切断された死体、サイコパス殺人鬼が誰かに成りすましてる?!といった展開が横溝正史にも影響を与えた?

正直それほど面白くなかった。古い怪奇小説といった感じ。この密室殺人のトリックは今の水準だとどうなの?って思った。

カー作品をなんでも読むのはもう止めにしたい。これからは傑作と評判のいい作品だけを選びたい。

2 件のコメント:

  1. カーは戦前からクイーンなどに比べて訳者に恵まれないと言われていたようです。いまでも愚作とされていた作品が、新訳が出た途端に傑作に変わるのですよ。

    バンコランは5作ほど登場して、HMとフェル博士に切替わりました。パリが舞台でネタが尽きたのと2作目以降の出来が悪かったせいでしょう。でも私はバンコランが好きですね。「夜歩く」では地味だったけど「髑髏城」の結末なんか探偵では有り得ないほど個性的だった。

    カーは「火刑法廷」「三つの棺」「プレーグコートの殺人」「曲がった蝶番」あたりが傑作かな。自分は「蝶番」が好き。容疑者が一人しかいないのに、犯人が誰なのか何をしようとしていたのか。謎解きまでわからなかった。ハヤカワからも創元からも出ています。

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  2. 先日「火刑法廷」ハヤカワ文庫版を100円で手に入れました。これから読むので記事になるのは2か月後ぐらいかも…。
    エラリーの「シャム双子」も手に入れました。100円棚に角川の新訳版と新潮文庫(昭和35年版)と2冊もあったので迷わず角川にしました。
    「曲がった蝶番」は400円ぐらいなら買おうと探すけど、まだ一度も見かけたことないです。

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