2016年11月17日木曜日

横溝正史 「殺人鬼」

横溝正史 「殺人鬼」(角川文庫)を手に入れた。108円。自分が手に入れたものは平成19年改版。

初版は1976年。この時代は「犬神家の一族」が映画化され、横溝正史ブームが到来。過去の作品が続々と単行本化されていたころ。人権上の表現が今の時代にそぐわない箇所は改められている。

「殺人鬼」「黒蘭姫」「香水心中」「百日紅の下にて」という4本を収録。すべてで金田一耕助登場。

「殺人鬼」(昭和22年12月 りべらる)
横溝正史が戦後、決意を新たに金田一探偵モノ長編で再起をかけて「本陣殺人事件」を書いてから1年後の作品。

全編で探偵小説家である「私」一人称で書かれている。義足の男につきまとわれる妖艶な美女と殺人。結末は「私」の独白手紙というパターン。

金田一さん初登場シーンが「ゴミをあさる変な男」w 

面白かったか?うーん…、短編としては65点ぐらいかな。

「黒蘭姫」(昭和23年 讀物時事)
戦後の焼け跡の銀座のデパートを舞台にした刺殺事件。厚いベールに外套姿の万引き常習犯「黒蘭姫」は店員たちにとって見て見ないことにする暗黙の了解だった。支配人の婚約者で社長令嬢だから。
たまたま一時的に現場に不慣れな人間しかいなかったために現場責任者が黒蘭姫に刺し殺される…という事件。
この時期の金田一さんは銀座の裏の京橋のビルの5階に事務所をかまえていたという設定。

これも、面白さは64点ぐらいかな…。

「香水心中」(昭和33年 オール讀物)
明治期に一代で築き上げた化粧品メーカーの一族の間で起こった心中事件、そして金田一さんと磯川警部登場。読んでて犬神家っぽくてちょっとワクワク。頭に映像がハッキリ浮かんできた。軽井沢が舞台。
だが、真実はそれほど印象に残るものでもなかった。これもラストは手紙による告白。面白さは67点ぐらい。

「百日紅の下にて」(昭和26年 改造)
この本に収録されている短編で一番短いが、この作品は横溝オタの間で大変に有名な短編。
昭和21年東京・市ヶ谷の邸宅の焼け跡で、義足の40男と復員姿の30代男の対決シーン。

この復員服姿の男こそが金田一耕助。この事件が金田一さんが南方戦線(ニューギニア)から帰還して最初に解決する事件。
金田一さんが戦友の川地から繰り返し聞かされた、由美という女性の一周忌法要で起こった毒殺事件の埋もれていた真実を暴く。
鮮やかに解答を示した金田一さんはその足で「獄門島」へと向かう…。

この作品が一番味わい深く面白かった。これは映像化しても面白そうだ。カワイイ幼女を置屋から買ってきて自分の理想の妻に育てるとか、それ、すべてのドルオタの夢だろう…。今以上に昔も変態が多かったに違いない。

PS. 長谷川版「獄門島」がBSプレミアムで19日に放送される。本当に久しぶりの金田一作品の映像化。予告トレーラー見たけど、これはそうとうに期待できそうだ。

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