ジャケットから推測して、おそらくシングルファーザー松山ケンイチの子育て奮闘記。
祖父の葬儀で親類一同が日本家屋に集合。なんとなくやって来た松山ケンイチ。「あれ?家の前に知らない少女がいる」
このシーン、ちょっとシャイニングを連想した。
なんとおじいさんの隠し子。これからどうする?息子娘たち夫妻、そろってみんな「ウチはムリ!」「もうちょっと可愛げある子ならねぇ」と押し付けあう。「施設にあずける?」
傍で聞いてたマツケンは嫌悪の表情。「俺があずかる!」
で、共同生活が始まる…というホームドラマ。ある日突然、父親になると身に降りかかってくる現実の数々!というわりと昔からあるタイプのドラマ。
マツケンの母が風吹ジュン。つまり、風吹ジュンの腹違いの妹が芦田愛菜。これ、考えてみたら「海街」と同じ構造。Notre Petite Soeur じゃん!なんでみんなそんなに冷たい?でもま、こちらのほうが現実的。
実は、自分は芦田愛菜の演技を見るのが初めてだったのだが、自分が予想していた以上に天才だった。神秘的な表情をしていた。
マツケンとごはんのシーン。塩をまぶしてお茶で手を湿らせておにぎりを作るシーン。自分もマツケンと同じ表情をしてたわ。
まず保育園どうする?という問題に直面。子どもを連れて満員電車、そして抱えて走って子ども預けてから出社。仕事が終わると娘を迎えに保育園まで全力で走っていく。
仕事もバリバリこなすマツケン。相談した上司から「そうだな。うちの会社じゃ子どもできたら、やめちゃうよな」、仕事ができる人ほど追い詰められていく。完全に社会の病理だな。
早々に生活が破綻するだろうな…と思っていたら、主人公は残業のない部へ転属を希望。意外にこれで上手くいく。
この映画、暑苦しい感じを想像していたのだが、ぜんぜん違っていた。
児童相談所職員・高畑淳子と熱くぶつかりあうシーンこそあるけど、これは必要なシーン。
芦田愛菜の実の母親であるマンガ家は見ていてムカムカしてくる人が多いだろうと思う。主人公がメールでやりとりするシーンが面白いのだが、喫茶店で話し合うシーンには主人公と同じ不快感を味わう。でも、最後にいちおうこのダメ母についても触れる。
この映画では若者の出産、子育て、雇用、社会構造などの問題も考えさせられるのだが、性的なことはまったく描かれない。主人公にそのへんは何もないの?
どうやらあこがれの雑誌モデルとの妄想シーンとしてマツケンと香里奈ダンスシーンが挟まれる。これがすごくウザいなと感じてたら…やっと香里奈が保育園で出会うシングルマザーとして登場。そうか、子供同士が仲良くなれば、親同士も仲良くなれるのか。
桐谷、性格のキツイ妹。兄を心配して電話してくる保育園の先生。
だが、こういうシーンって、なんで男とベッドに居るところからかけてくるん?桐谷が好きな自分としては心の準備ができてないと、見るだけでちょっとダメージを負う。
そういえば、「海街」でのまさみも父の死を電話で知るシーンは男とベッドに居る画だった。葬儀のシーンの後には若い女の「性の営み」も画で示さないといけないものらしい。そうやって命の循環を明示的に描く。この「うさぎドロップ」も最後にマツケンからそんなセリフがある。
最初の2階建て日本家屋が画面に現れるカット、生活を始めてまず食事のシーンも「海街」を連想した。桐谷はまさみ演じる佳乃にも見えた。
綾野剛、ひと目でヤバいやつって思った。最悪の事態も想像したのだが…、主人公の妹・桐谷の彼氏なのかい!
この映画、テーマが自分とあわないのでは、退屈なのでは…と心配して見たのだが、わりと脚本も演出も自分と合っていた。だが、お墓の前で「おとうさーん」って子どもが泣くシーンはその画だけで涙腺破壊力が強すぎる。
シングルマザーとシングルファーザー、このふたり、一緒になればいいじゃん。って思ってたけどそうもならない。さらっと流す。この映画の脚本にはいろいろと感心した。嫌だなって思うシーンが少ない。冗長シーンがない。なんの期待もせずに見たのだが、予想を上回っていい映画だった。
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