2015年9月15日火曜日

苦役列車(2012)

芥川賞作品の映画化である「苦役列車」(2012)を見てみる。ずっと避けていた。

原作者西村賢太自身がモデルとなっているであろう80年代の貧しい日雇い肉体労働者である19歳の主人公を森山未來が演じている。とにかく社会の最下層のさらに最底辺の青春を描いていて絶対暗い気持ちになると予想できるので、心の状態が良い時期に見たい。

森山未來が主演だとまさみも見てるんじゃないか?って思って…。それに山下敦弘が監督だし、重い腰をあげて見てみる。

バスで芝浦に運ばれる日雇い人足の群れ。みんな目が死んでる。
どうみても上品で育ちが良さそうな若者が1人いる。高良健吾だ。またしても九州から上京してきた専門学校生という役どころ。

ひたすら下品な北町貫多(森山未來)の唯一の友だちになってくれる。天使か?!ってぐらいにいいヤツ。だが、明らかにこのふたりは住んでる世界が違う。

森山の話題がヤった女の話とかひたすら下品。食堂で白ごはんおかわりしてしょう油かけて味噌汁かけて食ってる。道にたん吐いてる。高良を「一度知ったらやみつきになるからよ、来い!」と強引にフーゾクに誘う。ホンキで嫌がる高良。「こちとら15のときからフーゾクまみれだよ!」、ある意味すごい友だちだな。

高良が飲み屋につれてきたサブカル女に、下唇をヨダレで汚~く濡らして悪態をつく泥酔森山は史上最低のクソ野郎モンスターだったな。

主人公の唯一の趣味が読書だという。古本屋でバイト店員前田敦子を見つける。盛り場から古本屋へ行くと急に明るい場所に来た感覚。
森山の代役で高良が近づいて「こいつと友だちになってやってくれ」「いいですよ」のシーンには「嘘だろ…」って絶句したわ。

強引でずうずうしい森山に笑顔で接してくれる前田。「どんな本を読むの?」「横溝正史とか」「私も好き!獄門島とか」の箇所で吹いたわ。森山の枕元に「三つ首塔」が置いてあったの可笑しい。前田の部屋に強引にあがりこむ森山、前田をギラギラした燃えるような目で見つめる。カメラは前田の尻にロックオン。部屋の本棚には少年探偵団シリーズ。

すると、隣の部屋に住む寝たきり老人から「た~す~け~て~」の声。行ってみると老人がしびんを指差している。戸惑った前田が下の世話、「出していいよ」。森山の嫌そうな顔。

別れ際に前田の手を森山はべろ~んと舐める。「何すんの!」「冗談、ギャグ!ギャグ!」、森山、ホントに酷い。気持ち悪い人ギリギリをはるかに超えてるんだから「本、貸して」って部屋に来る段階で断れ!前田、3人で海に行くシーンで「下着、透けてる!」

マキタスポーツも出てる。「センパイ風吹かせやがって」っていう森山の目つきw
家賃を請求にくる貧乏アパートの大家の貧相っぷりが酷い。

家賃を払わず追い出される。高良に「泊めて!」とお願いするもそれは無理。「山谷に行きなよ」と人足オヤジが割って入ってアドバイス。
この主人公、他人を「最底辺のクズ野郎」とか言うけど、オマエが一番のクズ野郎だろうが!
ひたすら酷いダメ人間森山の反面教師っぷりで笑う映画?

仕事中に事故で松葉杖になった高橋(マキタスポーツ)は日雇いなので労災が降りない。「この先生きてたって何もいいことないぜ」、なるほど、人生は苦役列車。

怖いおっさんに絡まれて嫌~な雰囲気の中での動物ごっことか、何だこれ?ってシーンもすごく上手く撮っていて山下監督らしい。なんで西武ライオンズの帽子?昔はいい大人でも野球帽をかぶってたんだよなあ。

下品に酷いことをやりすぎた主人公の元から、高良も前田も離れていく。「俺たち友だちだったよな?」、あれ?いつどこで関係が終わったんだろう?って余韻を残す。前田を土砂降りの雨の水溜りで押し倒してキスしようとするシーンは完全に「モテキ」の長澤とのラストを踏まえたシーンに違いない。

3年経っても最底辺からさらに最底辺へ落ちていく主人公。何も救いが無い。救いが無い中で主人公は小説を書き始めるところで映画は終わる。最後の最後にほんの少しの救いがある。

森山未來演じる最低のクズ野郎っぷりには感心した。だが、ただでさえ世界は酷いのに映画でもさらに酷い世界を見るまでもない。

4 件のコメント:

  1. 『煙霞』黒川博行著 文春文庫のジャケットは、ドラマで主演した森山未來の顔UP。正直、本屋で見かけるたびに、引くほど気色悪い。(本の中身もTVも知らんが)
    さすが若手TOPレベルの演技派。顔芸も一流。

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  2. えっ、顔芸俳優?
    前田敦子の演技の評判もよかったみたいだけど…。

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  3. 僕は結構この映画好きでした。ただ原作を先に読んでいたので、ちょっと迫力的に負けてるなって思った。
    公開当時山下監督と西村賢太が対談していて、西村が映画をボロクソに批判してましたw
    映画を観ればわかるように、傍目には面白い人ではあるがこういう人とは絶対に関わりたくない..。

    森山未來だとひたすら陰惨で救いようが無いですね。もっと突き抜けた人の方がエンターテイメントになったのかも。
    ただ森山未來はやっぱり上手い。この人が出ていれば悪い作品ではないだろうと思える数少ない役者。

    前田敦子も妙な雰囲気が映画に合っていたと思う。次の『もらとりあむタマ子』でもかなり変な役でしたが、これも良かったです。僕はこちらの作品の方が山下監督っぽくて好きでした。

    山下監督の映画には能年玲奈が合うんじゃないかと自分は思っているんですが...。

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  4. 「タマ子」はまだ手にとってない。

    能年の映画がもっと見たい。もうレプロとの関係修復は不可能っぽいので契約終了をハッキリさせて、独自に単館規模の変な映画とかに出てほしい。

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