2015年4月30日木曜日

ステイト・オブ・ウォー(2006)

1982年のフォークランド紛争には以前から関心があった。南大西洋のフォークランド諸島(マルビナス諸島)をアルゼンチン軍が突然占領。英国は即海軍を派遣し激しい戦闘へ。西側陣営の大国同士が近代兵器を使ってガチで戦争をした珍しいケース。

フランス製エグゾセミサイルによって英国側は戦艦を撃沈された。白兵戦もあった。両軍あわせて3000人が死傷した。結果は同盟国アメリカなど西側各国の支持を得た英国の勝利。軍事独裁政権下のアルゼンチンは南米諸国の支持は得られたものの、どこからも軍事支援や派兵はしてもらえなかった。ポートスタンレーが陥落すると大統領は辞任した。

この戦争は近年、尖閣諸島をめぐって日中が対立している状況で、両国で研究が進んでいる。離島の侵攻と防衛のケーススタディ。だが、尖閣は無人島。そのまま当てはまる問題でもない。「尖閣」でアルゼンチンの支持を取り付けるために、近年中国はアルゼンチンに接近している…。

今まで遠い異国の自分とは関係ない戦争だと思っていた。一般市民が空爆から逃げ惑う体験をした日本から見ると、戦闘のプロ同士の戦いだと自分を安心させていた…。
だが、最近になってアルゼンチン軍側の戦死者の多くが18歳19歳の初年兵、「少年兵」だったという事実に衝撃を受けた。18歳って…、こどもじゃん!

それは太平洋戦争もベトナムも同じだったけど。現代においても経済状態が悪いと若者は軍隊に入らざるをえなかったりする。アルゼンチンもイギリスも、今現在のアメリカも日本も。他人事じゃない…。

YOUTUBEに戦争から4年後の1987年に英ヨークシャーテレビが製作したドキュメンタリーをNHKが放送したものがUPされているので見てみた。
両軍兵士の語る生々しい証言。英国は帝国のプライドを守り勝利に酔ったが、現場の兵士の悲惨で過酷な体験を政治家たちはイメージできてる?母親の名前を叫びながら死んでいった若い兵士の声を聞いたか?

以上のことをふまえて、アルゼンチンの兵士側からフォークランド紛争を描いた「ステイト・オブ・ウォー」(2006 アルゼンチン・スペイン)を見た。自分はほとんど戦争映画を見ない。気分が沈むから。だが、フォークランド紛争について学習するために。全編スペイン語の映画。

ベトナム、アフガン帰還兵でも起こったことだけど、過酷な戦場にいた兵士たちは心を病んでしまう。「自殺を図った帰還兵は290人を超えた」というナレーションで始まる。自殺未遂を起こして生死の間をさまよう友人を見つめる中年男、現在と過去、厳寒の泥の島で起こった暗い記憶。

夜中の白兵戦、見ていて何が起こっているのかわからない。見る側も兵士と同じ状況に置かれる。

上官から「祖国のために寒さも餓えも忘れろ!」って言われても…、そんなのムリやろ。食事が粗末すぎる。餓えのあまり羊を襲って食べる3人の兵士。さすがアルゼンチン人だ。解体とかできるんだな。やすらぎと休息の時間。「羊を殺すのを見たのは生まれて初めてだ」という若い兵士。血を滴らせた肉。このシーンが、やがてやってくる事態を暗示してることはあきらかだ。

祖国のためとはいっても、兵士はなぜあんな罪人のような扱いを受けるのか?上官は思いやりの心がないのか?敵と戦う以前に身内と戦って消耗してる。惨めすぎる。この兵士たちはマラドーナと同世代か少し若い。生き残って祖国に帰っても、英雄として迎えられなかったし、歓迎もされなかった。虚しい。倒れた友人の墓標を前にただ泣くだけ…。

近い将来、中国が尖閣に上陸するかもしれない。だが、日本は武力作戦で奪還はしないだろう。兵士一人の命の重さが両国政府で違う。クリミアの例を見ると、欧米各国は多少の経済制裁的なことに付き合うそぶりは見せてくれるかもしれないが、対外資産凍結のようなことはしてくれないかもしれない…。

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