自分は以前から松本清張に高い関心を持っていたのだが、この「球形の荒野」という作品は半藤一利の「清張さんと司馬さん」を読むまでまったく眼中になかった。
自分はどちらかというと清張作品は昭和ノンフィクション、歴史、短編が好き。社会派長編推理小説というやつはまだ5,6冊しか読んでないと思う。半藤氏が傑作と呼ぶので今回読んでみた。2003年に出た文春文庫の新装版上下2巻。ともに108円で入手。
1960年、清張はこの時期に「日本の黒い霧」「砂の器」「わるいやつら」「駅路」という傑作の連載を開始している。「球形の荒野」もこの時代の作品。たぶん面白いんだろう……
だが、自分としてはそれほど面白いとは感じなかった。殺人、不審死、銃撃事件とか起こるけど、社会派推理小説というよりは2時間半のドラマっぽい。人間模様が複雑に絡まりあう。
戦時中の欧州中立国を舞台にした和平工作をヒントに清張が組み立てた入り組んだ人間ドラマ。死んだはずの父とは知らずに父と会う娘。日本を捨てた外交官とかありえない話ではないと感じた。感動巨編?自分は別に感動しなかったけど。
新聞記者・添田の目を通して描かれる外務省の課長やら元新聞社論説委員の文化人とかの冷たい態度とかの表現は清張作品に登場する嫌な偉いやつらのそれ。
叔父しか書けない筆跡を芳名帳からたまたま発見って……どんだけ特徴のある書体なんだよ?って北宋の書家・米芾って今回初めて名前を聞いて調べてみたけど……、わかるかこれ?
清張の筆が冴えているとは思うが、京都観光のシーンやら、九州での野上と芦村の出会うシーンとか、連載小説っぽい冗長に感じる箇所もあった。
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