2013年9月13日金曜日

西堀栄三郎 「南極越冬記」(1958)

岩波新書から出ている「南極越冬記」(1958 西堀栄三郎)をこの夏読んでいた。今年は暑かったので南極の本でも読んでみたのだが、読んでも涼しくはならない。それほど寒さは伝わってこない。

自分が読んだものは2011年刊の第20刷。それだけ長い間、日本人の間で読み継がれてきた名著といえる。第1次越冬隊は京大、北大の先生がたを中心に結成。物理学者の隊長による日記をベースにしたエッセイのような本。

「宗谷」による最初の接岸(実際に南極大陸に接岸できるわけでなく氷海を割って近づける人員と荷おろしの限界)の時点から危機が始まっている。大事な荷物を地面(氷の上)ごと流される…。

雪上車の故障につぐ故障、犬ぞり探検中のブリザード、ボヤ騒ぎなど越冬中にそれなりの危機もあったのだが、最大の危機は1年後、巻末にやってくる。迎えに来た「宗谷」が海氷のために航行できずにほぼ「遭難」している……。

犬(カラフト犬)のことで「脅迫と嘆願」めいた急迫の電報のやりとりの箇所を読んで、ようやく「南極物語」で有名な「タロとジロ」の話はこの時か!って気が付いた。「越冬記」のその前の1年のことなので、その後の犬の運命のことは特に書かれていない。本の中に出てくる菊池・北村隊員が「南極物語」のモデルになった。

第1次越冬隊11名の平均年齢は37歳、最年長は西堀隊長の54歳、最年少は27歳。戦争が終わって12年だから隊員たちのほとんどは軍隊の経験があったんだろうと思う。みんなで協力し合って工事や観測、探検などの1年を過ごす。隊長はいろんなことを気にしている。

第1次ということで、やってみないことにはわからないことも多く、越冬の目的がはっきりしないことで「混乱」が生じている。
目的意識の高い隊員は観測機器や実験器具を自作したりしている。ない部品を2個から1個作り出す。日本は昔から現場が優秀なために、それでなんとかうまくいってしまう。

国際協力という政府の事業だったために現場と「ボタンの掛け違い」「帯に短し襷に長し」状態が発生した。
ここ、新田次郎なら「相互不信」「疑心暗鬼」をネチネチと書き連ねることだろうと思う。作家でない西堀隊長も「何でなん?」って不平不満を述べているけど、このことは後々の観測隊に活かされていったことだろうと思う。

いろんな人が口を出す状態が福島の現場でも続いていて未だに収束できない。この国では全体が見えている一人に任せるということが昔からできない。

この本を読んで昭和基地がどこにあるのか初めて知った。リュツォウホルム湾オングル島だ。周囲はすべてノルウェー語の地名が付いている。

2 件のコメント:

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    高度恐怖症、閉所恐怖症、船酔い、バス酔い。TPSD持ちで満員電車にすら乗れないっていうのに絶対居れない場所、住めない場所に、どうしてこうも魅かれるのでしょう?
    南極越冬・・・集団南極引き篭もり・・ええなあ!
    日本人は協調性があって我慢強い。けど傑出した人は出てこない。
    子供のころはアムンゼンに憧れてアザラシの干し肉が食べたかった・・・

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    自分も南極越冬ちょっといいと思う。嫌なヤツがいなければ気楽。ただ、気晴らしに買い物も散歩も出かけられず、テレビもラジオもネットもないって相当キツい。

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