新潮文庫松本清張傑作短編集(一)「或る『小倉日記』伝」(昭和40年)を読む。これも遠い昔に表題作だけ読んだことがあるので今回が2回目。
収録作は以下の通り
- 或る「小倉日記」伝
- 菊枕
- 火の記憶
- 断碑
- 笛壺
- 赤いくじ
- 父系の指
- 石の骨
- 青のある断層
- 喪失
- 弱味
- 箱根心中
初めて全12作の短編を読み通した。すべての感想を述べることは無理なので、印象に残ったものを読了したとを忘れないために短めに記す。
或る「小倉日記」伝
「三田文学」1952年9月号に発表。第28回芥川賞受賞作。生まれながらの障がいと貧しい母子家庭の境遇により、頭脳明晰でありながら不遇。森鴎外研究に生涯を捧げるも、その結末は…というビター短編。
この本のいくつかの短編に共通する、学問の世界に人生を捧げて努力したのに結果はすべてムダ!という痛切な悲哀。
この短編を齋藤飛鳥ちゃんは読んでるかもしれない。というのも昨年TGS北九州の発表会見でこのタイトルを出したから。「松本清張記念館へ行ってみたい」飛鳥の何事にも期待しないという態度と性格の心理形成の一因となった本かもしれない。
菊枕
甲斐性無の無気力田舎教師の夫と結婚してしまった気位の高い武家の娘。俳句に没頭。東京の高名な俳人の弟子として、周囲の空気も読まずに張り切るのだが…。
火の記憶
幼いころにいなくなった父の正体を探る旅。
断碑
学歴コンプレックスがありながら自信満々で攻撃的な在野の考古学者の生涯。
笛壺
歴史研究家が人世の最後に女性で転落。
赤いくじ
日本敗戦直後の朝鮮。進駐してくる米軍を慰撫するために、女性を慰安婦として差し出す計画。そして二人の将校の破滅。清張も朝鮮で終戦したので、実際に見てきたバカ軍人たちがモデルなのかもしれない。
父系の指
極貧だった清張の家庭と父がモデルの短編私小説かもしれない。
石の骨
これは読んでいて「もしかして明石原人発見がモデル?」と感じた。そのとおりだった。
青のある断層
上京してきた才能のない画家青年の絵を買い続ける画廊の目的は?
喪失
相互信金の外交員女性が正社員になるために仕事をわけてもらううのだが、その末路は…。
弱み
これは松本清張ですごくよく見るパターン。後ろめたい弱みを握られると金を強請られ続ける。
箱根心中
新宿から箱根へ向かった男女の風景。
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