2025年12月12日金曜日

白石仁章「杉原千畝 情報に賭けた外交官」(2011)

白石仁章「杉原千畝 情報に賭けた外交官」(2011)という新潮文庫がそこに110円で売られていたので連れ帰った。「8月17日、ソ連軍上陸す」と一緒に同じ店で買った。もしかすると同じ人がその店に売ったのかもしれない。

杉原千畝というと第二次大戦直前に多くのユダヤ人の命を助けたリトアニア総領事というぐらいの知識しかない。たぶん1990年代になるまでほとんどの日本人は知らなかった存在。

この本はそんなヒューマニスト杉原でなく、ソ連からもナチスからも警戒されるほどに有能だったインテリジェンスオフィサーとしての杉原千畝に焦点を当てた本。著者は杉原千畝を25年以上に渡って研究してる人らしい。

杉原は少年時代からとにかく優秀。親は医者にしたかったらしいけど、あまりに語学の天才だった杉原は早稲田大師範部英語科を経て外交官へ。英語、独語、仏語、そしてロシア語に堪能。ハルピン勤務時代に白系ロシア人婦人と最初の結婚しロシア語を磨く。(すぐに協議離婚)

満洲国外交部に奉職。ロシアとの東清鉄道買収の件で超絶有能ネゴシエーターぶりを発揮し重宝される。情報収集と諜報インテリジェンスの力と語学力を発揮。しかし、関東軍の将校たちを嫌いになるw

情勢の緊迫する欧州駐在の大物外交官たちも杉原を評価し部下に欲しがる。ソ連は一外交官にすぎない杉原へのヴィザ発給を拒否。この件はかなりもめる。ソ連は諜報活動してる証拠を一切残さない杉原に不気味なものを感じていた?

フィンランド勤務時代にシベリウスと面会!?杉原家にはシベリウスからもらったサイン入りポートレート写真がある!?本人からフィンランディアのレコードももらった!?そんなの初めて知った。ビビったw

あと、リトアニア総領事として多くのユダヤ人に本国の指令無視でヴィザを書きまくった人だと思っていたのだが、このユダヤ人たちはポーランド系ユダヤ人。杉原が命を救ったのはナチスに迫害され逃れてきたユダヤ人というより、ソ連の脅威が迫る中で国外脱出を試みたポーランド系ユダヤ人。そして杉原は白系ロシア人、ポーランド人らと諜報ネットワークを築いて情報収集をした人。ある意味でスパイの大物。

杉原は後の独ソ開戦が間近であることを大島独大使よりも先に知っていたし、ヤルタ会談でドイツ敗戦後にソ連が対日参戦することもいち早く知っていた。

ソ連の支配下で総領事館を閉じる。次の赴任先はプラハ。このプラハ滞在中にもユダヤ人のためにヴィザを書きまくった。このヴィザはナチスによる迫害から逃れてきたユダヤ人のためのもの。
ナチスのリッベントロップ外相からチェコ駐在の各国の大使が集められ恫喝的に国外退去を求められたとき、他国の大使たちが沈黙するなかで杉原だけが「ドイツにそんな権限はない!理由を説明しろ!」と食って掛かったそうだ。それは爽快。

有能で頭の良すぎた杉原。うっかり大量にヴィザを書いたわけではない。ユダヤ人の命を救うことが後に日本の国益になることも見抜いていた。実際に戦後は命を救われたユダヤ人たちが各国で活躍。
本省との電信やりとりで、自分が許されるギリギリを見定めていた。てっきり上司に反抗するアウトローだと思ってたけど、実際はとにかく有能で判断力があって人道を大切にする立派過ぎる人物。

独ソ戦が始まると杉原はルーマニアへ追いやられる。自分のもたらした有益な情報が有効に活かされない状況に嘆きも吐露。
戦後は川上貿易モスクワ支社に勤務。そのときの部下に川村透という人がいるのだが、なんとロックシンガー川村カオリのお父さん!?川村カオリの両親の仲人は杉原千畝!?びっくり。

この本、杉原千畝の本当の姿と杉原ヴィザの真実を教えてくれる良書。オススメする。

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