井上靖「風濤」(昭和38年)を読む。新潮文庫平成7年44刷で読む。これも処分するというのでもらってきた一冊。
元帝国という圧倒的戦力で国土を蹂躙し略奪と殺戮を有無を言わせずやってくる敵に対して、あまりに無力な小国だった高麗の媚び諂いを読まされる歴史長編。
日本史において最大の国難危機が元寇。自分、ごく最近まで高麗と宋が世祖フビライから日本侵攻計画に強制参加させられていたって知らなかった。なので興味を持って読み始めた。
だが、この本には日本はほぼ登場しない。フビライから日本に国使を派遣してねという要求に四苦八苦する高麗国王とその家臣たちの様子が硬派な文体で読ませられる。正直、それほど劇的な場面もない。
国王と宰相と軍人たちがどうすれば国を守れるのか?という元支配下属国の側からの悲哀と屈辱の歴史。そこは緊張感があるかもしれない。
元からの徴兵と徴用、物資の要求が高麗の国力をはるかに上回ってて絶望。男たちはみんな蒙古兵に殺されたのに、一体どうやって人員を確保できるというのか?
元宗と宰相李蔵用の奮闘。そして忠烈王と金方慶、忻都、洪茶丘といった軍人たち。そこんとこは緊張感のある場面かもしれない。高麗内部でのやりとりが初見すぎて何も予備知識がなくて一読では理解できない。
漢文混じりで読みにくい文体にしても、ページをめくってもめくっても面白くなってくれない。
文永の役、弘安の役における日本側との劇的な場面は一切ない。次の一行で敗戦撤退してて「えぇぇっ?!」って思った。
高麗の王は元と交渉したり意思を確認したり人事の報告のために開京からフビライのいる燕都(大都)まで何度も陸路往復してたって知らなかった。日本の天皇はほぼ京都から出たことないのに。
忠烈王に至ってはフビライの女婿となって国を元様式にしていく。自民公明が中国に媚び、自国を都合のいいように変えていく過程はこのようなものかもしれない。
高麗も元寇に積極参加してる事実は見逃せない。応永の外寇ともども日本の子どもたちに「お互い様」だとしっかり教えるべき。
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