2025年6月14日土曜日

高野史緒「カラマーゾフの妹」(2012)

高野史緒「カラマーゾフの妹」(2012)を読む。いただいた本で読む。
第58回江戸川乱歩賞受賞作と表紙に書いてある。自分はこの作者を知らなかったのだが、それなりに読まれている本かもしれない。

世界一有名な未解決事件とも言えるフョードル・カラマーゾフ殺害事件を次男のイワン・カラマーゾフ特別捜査官が真相解明に乗り出すコールドケースもの。なので登場人物は全員「カラマーゾフの兄弟」に登場する人々。まじか。

有罪判決を受けシベリアに送られ鉱山で死んだ兄ドミートリーは無実だったのかもしれない。真犯人は私生児スメルジャコフだったのかもしれない…と考える弟イワンは、父フョードル殺害事件から13年後、故郷のスコトプリゴニエフスクへ帰郷。

イワンは裁判のころには重い頭痛と記憶を失うという症状に悩まされている。そこに科学アカデミー会員のトロヤノフスキーがカラマーゾフ事件を一緒に調査。この人は最新の精神分析に関する知識も持っている。イワンが多重人格であることに気づく。

イワンは父の棺を掘り起こして頭部の損傷個所がドミートリーが犯人であることに矛盾しないことも確かめる。
だが、三文文士記者が殺害。さらに予審判事も殺害。思いもかけずに連続殺人事件へと発展。

これ、「カラマーゾフの兄弟」を読んでいない人でも楽しめるが、読んでいる人はより楽しめる。
だが、ロシア文学作品をいちども読んだことないという人は、登場人物の名前に戸惑うだろうと思う。ドミートリーの愛称はミーチャだったり、アレクセイはアリョーシャだったり、アグラフェーナがグルーシェニカだったり。

作者は「カラマーゾフの兄弟」をすべて精読し、違和感のある個所や不審な点など、ありとあらゆる疑問点を明確にする。「カラマーゾフ」の続編をフョードルの冤罪を晴らすサイコサスペンスとして、かなり精度の高いミステリー作品に仕上げてて感心。

自分はドストエフスキー「カラマーゾフの兄弟」をどう読んだらいいのか、どこがおもしろいのか正直わからないままだったのだが、今作を正直とても面白く感じながら読み終えた。あの長大な物語の理解度がさらに高まる続編だったかもしれない。できることなら世界の誰か、この本を映画化してほしい。

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