井伏鱒二(1898-1993)のまだ読んだことのなかった「黒い雨」(昭和41年)を読む。新潮文庫(平成24年78刷)で読む。
これ、広島の原爆を描く文学作品なので、読むとしんどくなりそうでなかなか開く気分になれなかった。やっと開いた。
てっきり自分はこの本は矢須子という女性が原爆直後の黒い雨に打たれて被爆したことで、縁談がまとまらず差別を受ける話だと思ってた。ちょっと違ってた。
矢須子が世間の誤解を解くために日記をしたため清書するという形で、閑間家の戦中と原爆投下のその日から終戦まで、そして戦後のありとあらゆる見聞きしたことを書き記したものだった。
原爆の恐怖をことさら煽ることなく、ただ淡々と見たもの、出会った人々から聴いた話などなどが書き連ねている。それでいてアメリカのやった非道さが伝わる。
見聞きしたことがすべて等価に書かれてる。そこに怒りとか悲憤とか嘆きとかはあまり書かれていない。だからか読んでいてとにかくリアル。
これは読んでいて戦争資料として貴重なものだと感じた。都市部への核攻撃がどのような事態を招くのか?という、日本人しか、広島長崎市民しか知り得ない出来事。活字で読む原爆資料館。
自分はつい怒りのあまり、こういうデータと情報は日本人だけで保持して有効活用するべき!とか考えてしまうけど、理不尽な目に遭った犠牲者たちはそんなこと思ってないだろうなと。
無辜の一般市民に熱線と放射能を浴びせてその後どうなったか?ただデータだけを収集したアメリカは許せん。体調が悪くて釣りしかできないのに、「いい御身分」みたいな嫌味を言うやつなんなの?
広島では原爆投下以後、軍人たちが「これまでのように威張っていいのか?」と疑問に思っていたらしいことは意外。自分なら原爆投下直後の混乱を利用して、自分を殴った憲兵とかにそっと復讐したい。
この当時の日本人は従順。上官や権力に歯向かう人はいない。しかし、今の日本人はもう違う。もう徴兵制なんて無理。一般市民に銃の撃ち方を教えたらどうなるか?それは上級国民がよくわかってると思う。
あと、反トランプ反米でまとまりつつある世界の先頭に立って日本はアメリカに復讐するべき。
そんなことを想ってしまうほど、この本を読むと怒り心頭。
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