2025年4月5日土曜日

ユゴー「レ・ミゼラブル」(1862)

ヴィクトル・ユゴー(Victor Hugo 1802-1885)「レ・ミゼラブル Les Misérables」を人生で初めて読んでみることにした。永山篤一訳の角川文庫(2012)上下巻を選んだ。

この本はミュージカルや映画にもなっていてほとんどの日本人にも馴染みのある名作という扱い。ナポレオン後の政情不安フランスを舞台にした作品で、日本人は大人ですらも理解しがたいというのに、なぜか児童向け図書室にすら置いてある。なんで?まあ、世界中で読まれてるのだから、ストーリーをなんとなくしか知らないのもまずいと思いページを開いた。

レ・ミゼラブルって文庫上下巻に収まるのか?と思いながら読んでいたのだが、この角川版は、レミゼラブル特有の読みづらさを解消するために、チャールズ・E・ウィルバーによる英訳をポール・ベニシューが1960年代に説明過剰な部分をそぎ落とし簡約編集した英語訳の日本語訳版。
なのでクドさがなくテンポが良いが、話の展開が急に感じることもあるかもしれない。

200年前のフランスが政情不安だし治安が悪いし、人々の心が荒んでいる。ということを読み始めて早々に感じる。昔は大変だ。
だが、これって令和日本もほぼ同じでは?と感じた。

ジャン・ヴァルジャンという不幸な主人公男が登場。パンを盗んで投獄。脱獄を繰り返したために19年監獄入り。犯した罪に対して罰が過酷すぎる。
現在の日本のネット社会は罪に対して重い罰を期待しすぎに感じる。重すぎる量刑は社会をさらに酷くさせないか?

ファンテーヌという幼い娘を連れた不遇な女が登場。この幼い娘コゼットを預かった宿屋の主人テナルディエ夫妻がとにかく酷い。子どもが病気になっただの嘘と脅迫でさらに金を巻き上げる。なのにコゼットを児童労働と虐待。多くの金を巻き上げて置いて何もしてない。金づるとしか考えていない。まるで昭和初期の「岩の坂もらい子ごろし」に匹敵する悪人。

これ、ほぼ令和日本。テナルディエとファンテーヌ&コゼット母娘の関係が、ほぼ自公財務政権と日本の一般国民。
しかも、テナルディエは戦場で略奪をする浅ましい悪党。こいつは最初から最後まで登場。早く死んでくれと願いながら読むはめになる。(ラストでのマリウスとのやりとりはスカッとするかもだが)

19世紀以前の文学作品でよくあるのだが、そんな不幸な男がどうやって巨万の富を得て人生やり直すことができるのか?
ジャンの場合はガラス細工の新技術だったらしい。かつて自分に宿を貸してくれた教会から銀製品を盗んだり、旅芸人少年の銀貨を盗んだりと酷い悪党だったジャンがいつのまにか聖人のような紳士になってるとか、そんなの小説だけの話。

あと、この小説で最大の嫌な野郎がジャヴェール警部。こんな司法権力の末端にすぎない役人がなんで社会でこれほど偉そうなんだ?
裁判所で自分の正体をバラしたジャン。逮捕するためにやって来て「もうお前は市長じゃない!」とか、いやいや、無実の罪を老人に着せようとした司法関係者たちはもう司直失格だろ。自信満々な検事と警察官が冤罪を生む。

このジャヴェールは最後までジャンにつきまとう。早く死んでくれと思いながら読むのだが、ジャンは最後まで聖人。命までも助けるし、これが19世紀のヒューマニティー。

上巻は朝ドラを半年間見たような感じ。下巻は暴動とパリ市街戦。

抄訳版ですら読んでいて長く感じた。だがもうこれからは映像作品を見ても、登場人物たちのことが分かった状態で見ることができるという安心感。

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