岡嶋二人「なんでも屋大蔵でございます」を読む。
1985年に新潮社より刊行、88年に新潮文庫化され、1995年に講談社文庫化。今回自分が読んだものは2006年第7刷。
街の便利屋・なんでも屋の釘丸大蔵(くぎまるだいぞう)を主人公とする連作短篇5本からなる一冊。
岡嶋二人はそのキャリアで名探偵というものをつくらなかったが、今作はクリスティで言ったら「パーカー・パイン」や「ハーリー・クイン」のような1冊限りの探偵。
とはいっても、町の便利屋として持ち込まれた仕事をしていて事件を見聞きし、その結果、謎を解いてしまう。べつにこちらから事件に突入してるわけでもない。
この釘丸大蔵という人物のキャラがよくわからない。おじさんではあるのだが30代なのか50代なのかもわからない。昭和33年丸石自転車に乗って仕事先にも事件現場にも行く。雑嚢をたすき掛けにして。
この文庫表紙でいちばん大きく描かれているベリーショートの婦人が大蔵なのかと思ってた。もしかしてニューハーフって。しかし大蔵は中央右寄りに小さく描かれてる自転車に乗ってるおじさん。なんと地味な探偵だろう…。
この人がすごく温厚で腰が低い。誰も敵をつくらない優しいおじさん。だから街のみんなから好かれてる。なのに登場する刑事や女性はやたら横柄で気が強い。ああ、読んでいてイライラするw ちゃんと報酬を得られているのか?
第1話「浮気の合間に殺人を」
夫の浮気調査を興信所に依頼したら、興信所の調査員が交通事故死。さらに部屋には泥棒が入った形跡がある…という若い夫人からの依頼。
第2話「白雪姫がさらわれた」
ネコ誘拐事件と街へのスーパー出店反対運動。
第3話「パンク・ロックで阿波踊り」
記憶をなくした青年からの「自分は誰?」という依頼。
第4話「尾行されて、殺されて」
出張で留守中にリスにエサをやる仕事のはずが大蔵は尾行され、穴に落ちたり死体を発見したり。
第5話「そんなに急いでどこへ行く」
横柄な口調で清掃会社の社長夫人から呼びつけられるも要件がわからず困惑。だが社長夫人が池の中から死体となって見つかって…。
どれもライトな作風。第2話はほぼ日常ミステリー。第3話は殺人を未然に防いでるので殺人すら起こってない。
どれも噺家さんが高座で話してるかのような語り口。
この本は80年代中ごろに発表されたものだが、自分の印象では60年代とか70年代の雰囲気を感じた。
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