2024年12月25日水曜日

三秋縋「恋する寄生虫」(2016)

三秋縋「恋する寄生虫」(2016)をKADOKAWAメディアワークス文庫で読む。
これは文庫のための書き下ろし作のようだ。作者の名前をどう読んだらいいのか知らなかったのだが「みあき すがる」と読むらしい。今回初めて知った。そして表紙イラストはしおん氏。

これ、林遣都と小松菜奈主演映画を見たのであまり読む気にならなかった。映画がなんとなくハッピーな終わり方のラブストーリーだったかと記憶しているのだが、原作小説はいろいろと大きく異なっていた。

主人公の高坂は母の死後に極度の潔癖症となり社会不適合者となり職を転々。自宅にこもりマルウェアを製作し散布する27歳無職。
そんな後ろめたいサイバー犯罪者の自宅に和泉というスーツ姿の中年男がやってくる。どうやら高坂のやってることはお見通し。脅迫される。「佐薙ひじりという子どもと友だちになれ」

指定された公園に行くと池の白鳥にエサをやってる17歳ぐらいの制服女子高生。プラチナブロンドのショートヘアーにヘッドフォン。意を決して話しかけると、和泉に頼まれたことはお見通し。和泉からもらうはずの報酬を半分くれ!
そして潔癖症男は女子高生を自室に連れて行くはめになる。潔癖の度が過ぎる男にとって自室のベッドに他人が勝手に座ってごろごろされるのは悪夢。

この佐薙という少女は不登校。よくよく話して見ると、高坂と同じように周囲から疎外される孤独の弱者。この子がなぜか寄生虫学の本をよんでばかりいて、寄生虫にすごく詳しい。

実は、この男女は脳内に寄生虫が住み着いてる?!寄生虫が引き合わせた男女?!
原作本のほうが映画よりも最新寄生虫学に関する蘊蓄が多い。寄生虫に関する知識や学説を教えてくれる寄生虫学ハードSFラブストーリー?!
(そういえばなんで小中学校の理科で寄生虫に関する知識ってまったく教えないんだろうか?アニサキスの生態とか、エキノコックスとか猫回虫とか住血吸虫とか、現代日本人にとって必須の知識のように思えるのだが)

映画の雰囲気も好きだったのだが、映画とはまるで違う終盤の原作もなかなか良い。表紙イラストは本の内容と雰囲気を伝えている。大人の読者も読んでいい。

0 件のコメント:

コメントを投稿