2024年12月27日金曜日

カーター・ディクスン「第三の銃弾」完全版(1937)

カーター・ディクスン「第三の銃弾」(1937)を田口俊樹訳の完全版(2001)ハヤカワ・ミステリ文庫で読む。
THE THIRD BULLET by Carter Dickson 1937
もうあんまりディクスン・カーには期待していないのだがたまたまこの本がそこにあったので読む。以前に短編として同名作を読んだことがあるのだがもう内容をあまり覚えていない。
本書は従来の「簡約版」でなく、Hodder & Stoughton社から刊行されたペイパーバック(1937)を底本とする「完全版」とのこと。

ロンドン警視庁警視監のマーキス大佐は部下のペイジ警部から、モートレイク判事殺害事件についての報告を受けている…という書き出しで始まる。

モートレイク老判事はロンドン中央刑事裁判所で殺人などの重罪を担当する判事。以前にタバコ屋の老婆を殴った強盗傷害事件でホワイトという不良に15回の鞭打ちと18カ月重労働の判決を下した。
その件でホワイトはモートレイクを恨んで殺すつもりでモートレイク邸へ。警戒していた警察官の監視下でモートレイクは銃撃殺害されるのだが、現場となった離れは密室状態。

そして、殺害現場で呆然としていたホワイトが持っていた銃がアイヴァージョンソン38口径リヴォルバー。だが現場の花瓶の中から発射されて時間の経っていないブローニング32口径オートマティックが発見される。警官は2発の銃声を聴いている。

ホワイトは殺すつもりで撃ったが殺してないと主張。ホワイトが発射した38口径はモートレイク氏の机の背後の壁から発見。
32口径ブローニングから発射された弾丸は窓の外の木に命中?
だが、判事の体内から摘出された銃弾はエルクマン22口径空気銃からのものだった!

これ、短編で読んだときはそこそこに感じた。だが今回完全版を読んだら、ボリューム的に丁度良い古典的英国ミステリの傑作だなと感じた。感心しかしない。
今まで読んだディクスン・カー(カーター・ディクスン)は駄作も多いイメージだったのだが、これは他人にもオススメできる。

マーキス大佐が最終的に一同を集めて真相を話すのだが、男女のドラマとしても秀逸。男の冷たい心変わりに衝撃。
これ、三谷幸喜に脚本書いてもらって日本人キャストでドラマ化してもいいぐらいだと感じた。

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